研究課題/領域番号 |
21K01127
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
黒澤 修一郎 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (30615290)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 憲法 / 違憲審査制 / 司法 / アメリカ |
研究実績の概要 |
本研究は、現代アメリカにおける政治のイデオロギー的分極化が、司法審査制の運用および理論に与える影響について研究するものである。 本研究の初年度である2021年度は、先行研究の調査と資料収集を中心に研究を進めた。具体的には、特に1970年代以降のアメリカ憲法判例の動きについて、政治におけるイデオロギー的分極化の進行と連関づけて考察した先行研究を調査し、整理と検討を進めた。法学および政治学の研究動向を調査対象とした。また、分極化の下における司法審査制の規範理論および制度構想の動向についても、アメリカにおける近時の研究の調査を進めた。 2021年度の具体的な成果として、中絶分野の近時の判例の動向を扱った論文を公表したことを挙げることができる。中絶は、アメリカにおいて党派的対立が高まっている典型的な争点のひとつである。同論文では、連邦最高裁が2020年6月に下したJune Medical判決を題材にして、中絶分野の判例の展開を追うとともに、現在の法的争点(違憲審査基準等)を整理した。また、各裁判官の行動戦略を分析し、今後の判例の見通しについて考察した。結論として、June Medical判決は、裁判官人事を通じて連邦最高裁が保守派優勢の方向へと移行するなかで、中絶判例のゆくえの不確定性を増幅させた事例として理解すべきであると論じた。同論文は、政治の分極化が憲法判例に与える影響に関する事例研究として位置づけることができる。 以上のような当該年度の研究は、今後の本研究の基礎を構築する意義を有すると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、先行研究の調査と資料収集を中心に研究を進めた。それにより、本研究課題に関する議論の動向の全体像について、理解を形成することができたと考えている。また、特に中絶分野の判例の動向について論文を公表し、分極化が憲法判例に与える影響に関する事例研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に公表した論文は中絶分野の事例研究であった。今後は、事例研究からより射程を広げて、連邦最高裁の憲法判例の動向に関する分析と考察を進める予定である。また、政治的分極化の下における司法審査の規範理論に関する調査を進めるとともに、そうしたアメリカを対象とした研究が日本に与える示唆について考察する予定である。 研究計画の変更点として、2021年度に行う予定であったアメリカでの調査は、コロナ禍の制約のため実施できなかったため、次年度以降に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に行う予定であった海外調査は、コロナ禍の制約により実施することができなかった。そのために生じた次年度使用額は、コロナ禍の状況が改善した段階で、海外調査のための費用として使用する予定である。
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