研究課題/領域番号 |
21K01127
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
黒澤 修一郎 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (30615290)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 憲法 / 違憲審査制 / 司法審査 / 政党 / アメリカ |
研究実績の概要 |
2022年度は、アメリカ政治のイデオロギー的分極化が連邦最高裁判所に与える影響についての調査・分析を進めた。また、分極化が司法審査にもたらす弊害をいかにして制御するのかにつき、規範理論や制度構想などの視点から考察を進めた。このように、当年度は、本研究課題に関するアメリカにおける議論の全体像を把握するよう努めた。 当年度の具体的な研究成果の例として、黒澤修一郎「アメリカ政治の分極化が連邦最高裁判所に与える影響と司法審査理論の動向に関する序論的考察」(只野・佐々木・木下編著『統治機構と対抗権力―代表・統制と憲法秩序をめぐる比較憲法的考察』(日本評論社、2023年)279頁以下)を挙げることができる。同論文では、まず、二大政党のイデオロギー的分極化は、遅くとも1960年代後半以降に始まり、その後は長期的かつ緩慢に進行していったが、現在では、政治的分極化の後を追う形で、連邦最高裁でも裁判官の間の分極化が生じていることを指摘した。具体的には、任命過程の党派化を受け、任命を行った大統領の所属政党に応じて連邦最高裁裁判官がリベラルまたは保守のイデオロギー的同質性を有する集団を形成するようになっていること、および、中道派裁判官が減少傾向にあること等を指摘した。また、分極化の下では、「司法府の党派的掌握」と「司法審査の政治的基盤の弱体化」という2つの弊害が生じうることを指摘し、その弊害を制御するための方策について、近時の司法審査理論の動向を紹介した。当該論文は本研究プロジェクトの中間的な成果報告としての意味を有すると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、上記のように、本研究の中間的な成果報告としての意味を有する論文を公表することができた。当該論文の執筆のための調査・研究を通じて、本研究課題に関するアメリカにおける議論の全体像を把握し、その概要を整理することができた点で、当年度は順調な進展があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当年度までの研究を通じて獲得した知見に基づき、個別の論点に関する考察をより具体化していきたいと考えている。とりわけ、司法審査の行動戦略、統治機構における司法府の位置づけ、および司法審査の制度構想の各点につき、分極化という政治的条件の下でどのような理論構成が望まれるのかにつき、考察を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に行う予定であった国内出張および海外調査は、コロナ禍の制約等の理由により実施することができなかった。それによって生じた次年度使用額は、2023年度以降に国内出張および海外調査のための費用として使用する予定である。
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