研究課題/領域番号 |
21K01128
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉野 夏己 岡山大学, 法務学域, 教授 (90379834)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 名誉毀損 / スラップ / 表現の自由 |
研究実績の概要 |
スラップ対策に関する動向は流動的である。アメリカ合衆国では、2022年現在、32の州及び1つの地域でスラップ被害防止法が制定されている。また、統一州法に関する全国委員会が、2020年7月にモデル「統一公的表現保護法(Uniform Public Expression Protection Act (UPEPA))」を提示した。他方、2015年にワシントン州、2016年にミネソタ州の最高裁判所が、それぞれのスラップ被害防止法を違憲と判断している(なお、ワシントン州は、2021年5月にUPEPAバージョンを新たに制定している)。そして、約20の州は、スラップ被害防止法の制定に消極的である。注目すべきは、2022年2月、「国連ビジネスと人権ワーキンググループ」は、声を上げる人権擁護者を脅迫し黙らせることを目的としたスラップ訴訟に対して警鐘を鳴らしている。国に対しては、スラップ被害防止を制定するべきであるという提言がなされ、また、企業に対しては、名誉毀損による損害に対して巨額の賠償を要求すべきではなく、人権擁護者への攻撃・報復を防ぐために人権デュー・ディリジェンスを実行すべきであると指摘している。 本研究の2022年度の目標は、前年度に引き続き、「学説を網羅的に調査・検討」することを主眼とし、「法分野別に紛争を類型化して分析を行う」ことを目標としている。この計画に従い、前者に関しては、これまでの研究の集大成として、アメリカ合衆国の概要を含め、名誉毀損法の憲法化及びスラップ対策に関して、『名誉毀損訴訟と表現の自由』(成文堂、2023年9月刊行予定)を出版予定である。また、後者に関しては、『「スラップ訴訟」の意義と実務対応(仮)』(日本法令出版、2023年10月刊行予定)において、日本におけるスラップ訴訟の現状及び有効なスラップ対策を分析している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『名誉毀損訴訟と表現の自由』(成文堂、2023年9月刊行予定)及び『「スラップ訴訟」の意義と実務対応(仮)』(日本法令出版、2023年10月刊行予定)の両者とも、出版社に原稿を提出済みであり、現在、校正段階である。
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今後の研究の推進方策 |
スラップ訴訟を巡る動向は流動的である。日本においても、多くのスラップ事例が報告されており、注目を集めている。日本では、スラップ対策が、果たして実体法的対策なのかか、あるいは、立法論なのかについて混乱しているように思われ、仮に、スラップ被害防止法の導入を検討するのであれば、表現の自由の価値基底論の探求、司法原理との接続、立法事実の検討など多くの課題を解決することが必要である。前年度に引き続き、できる限り多くの事例を分析して検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書購入計画の誤差が生じたものであり、次年度にも研究用図書購入費などにあてる予定である。
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