研究課題/領域番号 |
21K01131
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
大野 悠介 下関市立大学, 経済学部, 講師 (00836926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 経済的自由 / 職業の自由 / 規制目的二分論 / 経済市場 / モーリス・オーリウ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、規制目的二分論を再構成し、現代のグローバル化市場にも適応できる、職業の自由に関する理論を構築することである。2021年度はこれまでの準備的な研究をさらに深める計画であったが、それに関してはいくつかの成果を出した。大きく分けて、①判例研究、②理論研究、③グローバル化市場との関係に関する研究である。 まず、判例研究については、「薬事法判決における流通システムの析出」下関市立大学論集64巻3号1頁以下において規制目的二分論にまつわる薬事法判決を流通システムという観点から再読するとともに、「小売市場判決と薬事法判決の引用に関する覚書」同65巻3号1頁以下において職業の自由に関する判例理論の最新動向を考察した。前者は③にもつながるものであるとともに、いずれも自身の準備的研究を修正しつつも補強する意義を有する。 次に、理論研究については、「「憲法」と「国憲」のあいだ」同65巻2号41頁以下は、トランスナショナル人権法源論と持続的民主主義とに、グローバルな世界における動態的な秩序構想の萌芽を見出したものである。そして「ルフェーブルにおける〈創造的な法イメージ〉と特異性」憲法研究10号289頁以下(掲載決定が2021年度内)は、その動態的秩序の根底にある特異性をルフェーブルの法哲学などから析出したものである。 最後に、グローバル化市場との関係では、「グローバル化市場における人権保護」横大道ほか編『グローバル化のなかで考える憲法』(弘文堂)230頁以下において、自身の理論的な基礎を背景として、ビジネスと人権の捉え方を憲法理論的に解明した。 以上の研究成果は、判例理解・基礎理論を深めるとともに、グローバル化市場への接続を試みたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の概要に記したように、2021年度の計画では、これまでの準備的研究を深める予定であった。 その点については、計5本の論文によって十分に果たしたと考えている。特に、動態的な秩序観に関してはリンダールへの理解をより深めることができ、さらにはグローバル化市場と自身の理論とを結び付け、現在問題となっている「ビジネスと人権」に接続することができたことは、大きな成果であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、計画通り、これまでの研究成果を踏まえつつ、博士論文を執筆することに集中する。 その過程においては、オーリウを再読しより精確な理解を得ること、本研究が憲法学に対して有する意義をより明確にすることを意識する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、研究室に必要な物品の購入が遅れたこと、現在の貿易状況に鑑みて洋書の購入を差し控えたことから予定よりも支出が少なかった。 旅費については、コロナ禍によりオンラインでの学会・研究会の開催がほとんどであったため、使用する機会がなかった。 翌年度は、博士論文の作成を見据えて、単価の高い和訳のある洋書(原書)の購入を優先的に行う。また、現在使用しているPCの性能が研究をするのにやや不十分になってきたことから、買い替えを行うこととする。旅費については、今年度は対面での開催も増えてきたことから、可能な限り対面で参加しより多くの情報や知見を得られるようにする。なお、海外出張については、情勢を見て自身および周囲の安全を考慮し、翌々年度に繰越すことも考えているが、よい機会があればヨーロッパのいずれかの国に出張することも考える。
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