研究実績の概要 |
2022年度は、研究実施計画書の計画通り、博士論文の執筆を行った(現在審査中である)。 博士論文の意義は、第一に、モーリス・オーリウおよびハンス・リンダールの理論を踏まえ、法的世界を多様かつ具体的な非人格的秩序の組み合わせとして理解する「多元的かつ多層的な秩序構想」を提示したことである。非人格秩序とは一定の理念の下で多様なアクターによって維持される制度的存在である。この秩序構想によって、国家を経済秩序の下でその理念に沿って権限を行使する法的人格として理解可能となった。博士論文の第二の意義は、経済秩序もまたその内部に国家を含むものとして理解され、当該秩序内在的になおかつ国家領域に留まらないグローバルな観点で憲法論を展開できる点にある。 2022年度は当該博士論文以外にも、①「ルフェーブルにおける〈創造的な法イメージ〉と特異性」憲法研究10号(2022年)289-301頁、②Hans Lindahl,Takao Suami,Keisuke Kondo,et al., A Theory of Global Law and its Fault Lines : Japanese Scholars in Dialogue with Hans Lindahl,Netherlands Journal of Legal Philosophy,50(2),144-164,2022 を発表した。 ①は博士論文で提示した理論の根底にあるものについて、法哲学者ルフェーブルの研究を主とし、リンダールおよびドゥルーズ研究を援用しながら、人権論の中で論じた試論である。 ②は本研究における理論の一つの核となっているリンダールとの対談であり、それによって彼の理論に対する理解が深まった。なお、昨年の夏には、リンダールも含め本研究に関わる諸学者との意見交換のため、研究実施計画の通り、ヨーロッパに出張を行った。
|