研究課題/領域番号 |
21K01145
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘイトスピーチ / 憎悪表現 / ジェノサイド扇動 / 表現の自由 |
研究実績の概要 |
初年度となる2021(R3)年度は、ヘイトスピーチへの法的対処に関する憲法学上の諸論点の研究を行った。まず第一に、日本国内に規制をめぐる議論に焦点を当てた論文「社会の分極化とヘイトスピーチ」を公刊した([雑誌論文])。そこでは、ヘイトスピーチ規制に対する強い警戒感の存在をふまえつつ、国内においてコンセンサスを形成しうる対応方法を検討し、限定的な規制手法として、ジェノサイド扇動表現の規制の導入可能性を提示した。また、第二に、当該論文をふまえ、ヘイトスピーチ対策の一環としてのジェノサイド扇動表現の規制に焦点を当て、ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(日本未加入))等の定義を参照しつつ、日本の国内の法制度及び判例法理の分析を通して、新規の表現規制としてのジェノサイド扇動表現規制の導入可能性の検証を行い、暴力行為を扇動するヘイトスピーチについては表現の自由の保障に反することなく規制することが可能であることを指摘した。この研究成果については、国際学会(オンライン開催)において英語で報告を行った([学会発表])。 これらの研究活動を通して、日本におけるヘイトスピーチ規制に関する分析を提示することとなり、一定の成果をあげられたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだ成果の発表に至っていない課題も残されているが、日本におけるヘイトスピーチ規制に関する研究成果の国際的な発信については順調に進展していることから、「おおむね順調に進展している」と考えている。なお、新型コロナウイルス感染症の流行のため、国際学会がオンライン開催となったことから、諸外国の研究者との十分な意見交換が実現できていないが、この状況は次年度以降は改善されることを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
2022(R4)年度も、当初の研究計画をふまえ、研究遂行、論文執筆、学会発表を行う予定である。具体的には、ヘイトスピーチの一形態であるところの暴力扇動ないし嫌がらせにつき、すでに収集を終えて分析を進めている判例及び文献を元にしつつ、さらに追加の資料の収集及び分析を行い、その成果を論文又は学会報告を通して公表することを計画している。また、当該年度中には、徐々に国際学会の対面参加も可能となることが予想されることから、諸外国の研究者との意見交換を十分に行うことが可能となると期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、諸外国の研究者との研究会や資料収集などのための出張がすべて実施できなかったことに加え、一部の物品及び書籍の購入も見送らざるをえなかったことから、残額が生じた。次年度(2022(R4))は徐々に出張も可能となることが予想されるため、出張及び書籍等の購入を適切に計画していく予定である。
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