研究課題/領域番号 |
21K01148
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
西山 千絵 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (20633506)
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研究分担者 |
武田 昌則 琉球大学, 法務研究科, 教授 (60404547)
長嶋 佐央里 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (90733501)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 婚姻 / 家族 / パートナーシップ / 嫡出推定 |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢化社会における家族の多様化に対する法的支援の面に焦点を当てて、同性カップルへの婚姻保障、性別の組み合わせを問わないパートナーシップ制度をはじめとする論点につき、理論的・実務的・財政的側面から掘り下げることを目的としている。 2024年度は、婚姻および、カップル間に生まれた子どもの嫡出推定の現代的意義に関する研究、同性婚に関する研究、研究会での報告を実施しながら、現代の婚姻のあり方と方向性をあらためて多角的に検討・解明しようと試みたものである。 昨年度は、西山の業績として、「同性カップルの婚姻の憲法的基礎づけに向けて」(36-54頁)ジェンダー法政策研究所編『同性婚のこれから―「婚姻の自由・平等」のために法と政治ができること』(花伝社、2024年)所収、「ジェンダーに配慮した議会」と日本におけるその実現──IPUジェンダー自己評価『議会のジェンダー配慮への評価に関するアンケート調査』報告書を受けて(128-141頁)山本 龍彦=白井 誠=新井 誠=上田 健介『国会実務と憲法 日本政治の「岩盤」を診る』(日本評論社、2024年)所収、武田の業績として、「嫡出推定等に関する改正法の概要と今後の課題」月報司法書士 (616) 2-12頁(2023年)を公表している。 わが国における同性婚訴訟の展開は、憲法24条の条文構造、さらには家族の自由な形成とその保護に関連して普遍的な示唆を与えるものである。婚姻外のパートナーシップは、ケアにひらく婚姻とその制度的限界について検証する作業を経て、より深められるという理解に至った。この点、ハンセン病家族訴訟における家族形成の機会喪失も事例として参考にしている。以上の研究を進めるにあたっては、特に今年度は、実務家の分担者から一定の助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年目までは、コロナ禍により、研究グループでの意見交換の機会を得る以外では、県内外における調査等に支障が生じており、研究3年目においては、研究会報告、科研費の助成による成果として業績の公表を行うことができた。しかし、これまでの自治体調査等に基づく、財政面での十分な考察および分析作業までには至っていないことから、現在までの状況を踏まえて、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究の最終年度に向けて、これまでの研究結果を踏まえて、多様な家族化に対する適切な法的制度のあり方を検討していくために、研究代表者および分担者の間で定期的に意見交換、進捗状況の報告の場をもちながら、以下のように分担・遂行していく予定である。 西山は、引き続き代表者として研究全般について考察を行い、調査の調整および準備を進めていくとともに、海外の事例に向かう(カント的意味における)批判的視点をもって、比較研究を実施する。また、これまでの研究で浮き彫りになった同性婚の憲法24条のもつ規範構造の問題を踏まえて、どのような解釈論のあり方が望ましいかを、さらに訴訟の進展とあわせて、わが国の議論に還元していく。 武田は、これまで実務家として手がけてきた事案から得た知見や、親権も含めた家族のニーズの進展状況について、研究最終年度時点における現況をとりまとめるとともに、研究代表者である西山に対して、適宜、総合的な観点から助言を行う。 長嶋は、必要に応じて追加調査を計画し、財政面でのパートナーシップ制度の裏付けを比較検討するとともに、家族に対する支援に効果的に取り組む地域の事例等も調査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由としては、今年度においては計画通り文献収集、業績発表等が進んだものの、コロナ禍により実施できなかった調査活動の遅れが影響したと考える。本研究の遂行に際して、相応の割合を占める旅費が2022年度まではそこまで支出できなかったことに起因したものといえる。 今後は、研究結果に基づくさらなる業績の公表、研究会報告に向けて、研究グループでの成果状況の確認を行い、内外の実地調査の追加等に未使用額を充当しながら、研究最終年度に向かって、研究遂行していきたい。
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