研究課題/領域番号 |
21K01152
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小川 有希子 帝京大学, 法学部, 助教 (80846288)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 立法過程 / 規範形成過程 / 国会によるコントロール / 専門知 / 科学技術と法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、科学技術に関する専門知の規範形成過程における位置づけを明らかにし、もって、科学技術に関する規範形成およびその実践の場面におけるよりよいガバナンスの可能性を提示することにある。とりわけ、<提案→評価→決定→再評価(→提案)>の円環構造のなかに、「専門知」を位置づけ、かかる円環構造を制度化することにより、専門的知見を集約するための経路を民主的なプロセスのなかに位置づけることができないか、フランスの法制度を比較研究しながら検討している。 2021年度は、専門知集約の経路に関する日仏比較研究を予定していた。日本では、専門的知見を集約するための経路が行政の審議会に集中しているところ、フランスにおいては、行政のみならず、議会内部や、議会・行政とは独立した機関(経済・社会・環境諮問会議)など、複数の機関において専門家に諮問するための制度が設けられている。さらに、国民からの諮問が一部認められている点にも大きな特徴がある。そこで、このようなフランスの制度を参照しながら、フランスにおける科学技術に関する専門知の規範形成過程における位置づけを整理し、Covid-19をめぐる政策決定を具体的な事例として取り上げ、専門的知見の政策決定への反映と民主的意思決定との緊張関係を、フランスがいかに克服しているかについて検討した(「専門知の法的位置づけ:フランスの政治的意思決定過程を中心に」法律時報1170号(2021)36-41頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間の1年目においては、日仏比較法の手法を用い、公法学の観点から、専門知を集約するための経路を体系的に整理することが目標であった。概要欄に記載のとおり、2021年度は、フランスにおける専門知集約のための制度を整理し、Covid-19をめぐる政策決定を具体的な事例として取り上げながら、専門的知見の政策決定への反映と民主的意思決定との緊張関係について検討することができた。したがって、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、専門知と政策決定の関係に関する日仏比較を予定している。たとえば、Covid-19をめぐる政府対応は、専門知に基づかない政策決定がなされた場合における当該決定の正当化の問題を提起した。専門委員会において、利害関係の調整を含む一連の規範形成がなされている実態の正当化根拠は、従来、専門家ないし専門家集団の自律性・専門性・独立性に求められてきたところ、このような考え方はどの範囲で妥当するのか。政府と国会の関係に関する憲法理論(議院内閣制の下における議会によるコントロールと政府の説明責任)を前提に、あらためて専門家が政策決定に関与することの正当性・正統性について検討する。
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