研究課題/領域番号 |
21K01163
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
桐山 孝信 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (30214919)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自決権 / 国際法学 / 帝国 / 国民国家 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでの自決権論を総括的に評価しつつ、具体的事例に即して、自決権の負の側面にも光をあてながら検討することを目的にしている。 第1年度は、2021年9月に開催された国際法学会研究大会で、「「開発」をめぐる主権の展開と規制の論理」と題する報告を行った。その報告要旨は、開発をめぐる主権について、自決権の経済的側面を表現している「永久的主権」の現代的意義を考察した。その登場から1970年代まで永久的主権は、発展途上国による先進国や先進国企業に対する抗議概念として、国有化補償や紛争解決手続での主権の徹底を図るものとして機能したが、1970年代のNIEO構想の頓挫、1986年の発展の権利宣言の採択、2015年の総会決議「持続可能な発展のための2030アジェンダ(SDGs)」をフォローして、経済成長を目標とする開発から、人権としての発展の権利を承認し、環境と調和した開発の持続可能性を強調することへと変化したことが、永久的主権の主張とともに確認されるとした。特に21世紀にはいると、規制対象であった企業を開発の原動力とみてパートナーシップへと転換したMDGsを継承し、途上国問題の解決策としての開発からグローバル課題としての開発と意味づけを転換したSDGsが高唱されたと報告した。 また、2022年2月19日に、松野明久大阪大学教授主催の「西サハラの自決権を考える」シンポジウムで、今日でもなお植民地支配からの解放を遂げたモロッコによる「植民地的支配」が法的な対立構成では自決権対領土保全原則という問題となっており、双方に正当性を与える契機となっており、問題解決を妨げていることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の課題としてていた資料の収集について、着実に行うことができた。その半面海外出張をはじめ国内の出張についても自粛が求められたことから、現地でなければ得られない情報に接することができなかった。 また研究実績に記載の通り、自決権の政治的側面、経済的側面についての検討を研究会で2回報告し、取り上げるべき課題について明確になった。これらの報告については、論説として発表すべく準備中である。 本研究課題に関連した日本における政治的自決権の問題として、日米安保体制と近年の米中対立の関係が論点としてあるが、これについても2021年12月に簡単な報告を行う機会が与えられた。この報告によって、課題追求の進捗に大いに役立ったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、1年目に研究会等での報告を論説として発表することを予定している。これに加えて、以前より検討していた開発過程における先住民族の権利問題について、活字化されることになっており、これを含めて、総合的に検討を進めることとなる。 第二に、内的自決の実現という意味での民主化実現と国際法との関係について検討し、研究会での報告及び論説としての発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は大学の方針もあり、出張等の自粛が求められる中で、旅費等の支出がなかったために、図書を中心とする資料の購入に充てたが、使い切るまでに至らなかった。しかし残額はわずかであり、次年度予算に含めて、引き続き資料の収集や謝金などの使用に努めたい。可能であれば、国内出張も計画したい。
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