研究課題/領域番号 |
21K01164
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
猪瀬 貴道 北里大学, 一般教育部, 教授 (70552545)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 投資条約 / 投資仲裁 / 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度) / エネルギー憲章条約(ECT) |
研究実績の概要 |
本研究課題は、投資条約制度が、投資受入国の政策変更に対してどのような制約要因となりうるかについて、投資条約規定および投資条約仲裁事例の検討するものである。この問題に関しては、スペイン、イタリアにおける再生可能エネルギー固定価格買取(feed in tariff: FIT)制度の運用や改廃に関連した投資紛争事例が生じている。これらの国々を中心として、再生可能エネルギー関連の投資をしていた外国人投資家が、仲裁に紛争を付託した具体的な事例についての検討を中心に研究を進めている。 今年度は、引き続き一次資料(新たに公開された仲裁判断など)の収集と整理(当事者、根拠となる投資条約規定、問題となった制度・政策の変更といった観点から分類)を中心に研究を進めた。それとともに、関連事例の評釈についてもあわせて収集、検討を行った。また、根拠となる投資条約のなかで大きな部分を占めるエネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty: ECT)についての先行研究文献について収集、検討を進めた。 なお、ECTについては、現代化を進める議論と交渉が行われ現代化案について一区切りがついた一方で、EU(および加盟国)による脱退の動きが顕在化している。これらの動向を踏まえてEUによる一次資料および関連研究者による二次資料(学術論文、学術Blog記事など)の収集を進めている。 現時点での成果としては、本研究と関連する事例を含む2023年に判断がなされた(または公開された)投資仲裁事例全体の概要を紹介する総説記事を『日本国際経済法学会年報』誌に公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに豊富な事例の蓄積が進んでいるスペイン、イタリアにおける再生可能エネルギー固定価格買取(feed in tariff: FIT)制度の紛争事例に関連するものを中心に一次資料について整理を進めており、これらの事例については資料収集が一定程度完了している。しかし、ECTの現代化の動向、EU諸国によるECTからの脱退の動きなどが生じたため、新規に収集と整理が必要な資料が多くなり、昨年度の進捗の遅延に伴う累積的な遅れもあり、当初の研究計画の修正が必要となっている。 また、本年度については新規業務が発生した関係で、本研究課題に割り当てる研究時間が減少してしまった。 したがって、進捗状況は、当初予定していたものよりもやや遅れている状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
論点整理を先行させるため、関連する文献収集を進めて分析を行う。明らかになった論点に基づいて一次資料の整理・分析を工夫する。また、検討対象とする時期や国家をある程度限定することによって集中的に調査・整理を実施する。研究期間を一年延長した上で、それらの方策によって研究を推進することによって本研究課題に関する一定の成果を確保する。 並行して可能な限り関連する資料については広く収集して整理も進めていくことで、本研究から発展させる今後の研究として、一般的動向としてより範囲を広めた形での国家の政策変更と投資条約との関係についての研究につなげることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、本研究専用パソコンの購入を予定していたが、専用パソコンの必要性と予算とのバランスの観点から購入を見送った。今後、研究成果の取りまとめ等の実施に向けて価格動向を見極めながら専用パソコンの購入を検討する。また、研究図書の購入については、すでに手元にある資料やインターネット上で利用できる資料に基づいて購入する必要のある図書の選定をし直す作業を継続しており、次年度以降に購入することとした。 旅費については、オランダ・ハーグ平和宮図書館を利用した資料収集の実施のため夏に外国出張を計画していたが、新たな業務が生じた関係で断念した。研究の進捗状況に応じて改めて外国出張を検討する。また、外部機関での資料収集等に代えて、もっぱらインターネットを利用した資料収集を行ったため旅費も未使用となった。 以上の理由により、今年度に予定していた使用額が大幅に減少したため、繰り越しとして次年度使用額が生じた。
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