研究課題/領域番号 |
21K01168
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 真理子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90234096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際司法裁判所 / 国際海洋法裁判所 / ISDS条項 / 投資紛争 / 特別アフリカ裁判部 / 個人の国際犯罪 / 勧告的意見 |
研究実績の概要 |
2021年度は、海洋法の分野における紛争解決手段としての国際裁判、経済連携協定及び投資協定における紛争解決手続、個人の国際犯罪の訴追を確保するための国際裁判制度についての研究を行った。 海洋法の分野では、この分野の裁判制度だけでなく、新型コロナ感染症に船舶、とりわけクルーズ船の運航の際、どのような対応が必要かについての研究を行った。海洋法分野の裁判制度については、2015年に国連海洋法条約附属書VIIに基づく仲裁裁判所の仲裁判断、2019年に国際司法裁判所の勧告的意見、2021年に国際海洋法裁判所特別裁判部の先決的抗弁が出された、チャゴス諸島に対する主権に関する紛争が論点となった国際裁判の3つの先例に特に注目した研究を行った。従来は国際裁判所の争訟手続に関する先例の研究が中心的なテーマであったが、勧告的意見の制度について研究を行うことで、国際裁判制度全体について新たな視点を得たと考えている。 経済連携協定及び投資協定における紛争解決手続きについては、個人が外国国家を相手として投資紛争を仲裁裁判に付託することを可能にする、ISDS条項が最近の経済連携協定及び投資協定においてどのように位置づけられ、いかなる問題が生じているのかを研究した。 個人の国際犯罪の訴追を確保するための国際裁判制度については、国際司法裁判所の訴追又は引渡しの義務に関する問題事件の2012年判決後にセネガルの国内法制度の中に設置された国際性を持った裁判制度である特別アフリカ裁判部の事案の研究を行い、国際司法裁判所の判決と国内裁判所の中の特別な国際的な制度の関係を考察した。 以上のように2021年度の研究は個別分野の先例研究が中心となった。これらの研究により、国際司法裁判所と他の国際裁判手続の関係を考えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、研究計画のうち、外国調査については実施できていない。しかし、そのために必要な時間と経費を文献調査に充てることができており、研究課題について熟考する機会を得ていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は個別の国際裁判制度の先例研究を中心とした。2022年度もこうした個別の裁判制度の研究を続ける予定である。特に、国連海洋法条約第15部の下での義務的裁判制度と経済連携協定及び投資協定のISDS条項に基づく個人対外国国家の仲裁について、より多くの先例を研究したいと考えている。また、2021年度の国際司法裁判所の勧告的意見の先例の研究成果をふまえ、国際海洋法裁判所の勧告的意見制度についても検討したいと考えている。 なお、2021年度は外国調査ができなかったが、できれば、2022年度はこれを実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では外国調査を行うための旅費等を計上していたが、コロナ禍で外国出張ができなかった。このため、研究方法を文献調査に変更し、多くの資料を収集したが、外国調査のための旅費等の額には至らなかった。
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