研究課題
現在進行中のウクライナ戦争やガザ戦争を素材として、法的・軍事的に非対称な当事者間の武力紛争において、国際人道法がいかに適用さているかを再確認する1年となった。第1に、ウクライナ戦争との関連で、侵略国と大多数の国により認定された国が、国際人道法上の権利を享受しうるかを、現代国際法の発展状況を踏まえて再検討した。特に、2023年度国際法協会日本支部例会での報告、さらにスペインで開催された国際ワークショップでの報告を経て、武力紛争法・国際人道法の平等適用原則の重要性と課題を再認識した。第2に、ガザ戦争との関連で、領域性の曖昧な紛争主体が武力紛争を争うにあたって、またそのような紛争主体との武力紛争に他方当事者が従事するに際して、国際人道法がいかに適用されうるのかを再検討した。特に、ICJの2004年「パレスチナ分離壁」勧告的意見を綿密に検討する機会に恵まれ、今日に至るイスラエル・パレスチナ紛争における領域の扱いの中核性を再認識することができた。また10月以降のイスラエルによる大規模なガザ攻撃により、特にガザの地位をめぐる議論を様々な研究者と行うことができた。それを通じて、占領法適用の困難さ、占領法の部分性、多様な適用法規の調和的適用の必要性などが明らかになった。第3に、戦後米軍による沖縄統治に関する研究を通じて、国際人道法・占領法の脱植民地主義的再構成の必要性を痛感し、2023年4月に公刊した書籍のフォローアップを少しずつ始めた。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍の影響を完全に脱した7月以降、欧州への出張なども可能となり、大きな成果を上げることができた。
最近は、ウクライナやガザなどのon-goingな議論に影響を大きく受けているが、あらためて占領に関する歴史的研究も進めて、研究の深化をはかりたい。
出張計画が健康上の理由などにより実施できなかったことによる。2024年度に予定していた出張と統合する形で実施する計画である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
法学セミナー
巻: 829 ページ: 52-58
Japanese Yearbook of International Law
巻: 66 ページ: 133-168
小畑郁・山元一編『国際人権法の理論(新国際人権法講座2巻)』(信山社)
巻: - ページ: 123-147
Shuichi Furuya, Kuniko Ozaki and Hitomi Takemura (eds.), Global Impact of the Ukraine Conflict: Perspectives from International Law (Springer)
巻: - ページ: 253-271