本研究はデジタルプラットフォームを念頭においたものであるが、2022年度においては、プラットフォーム規制より広く、経済法規制一般について検討を行うことになった。公表論文のうち、一つは電力市場におけるシステム改革の進展と競争政策上の課題をまとめたものであり、システム改革におけるさまざまな市場(容量市場、非化石価値取引市場、間接送電権)の立法過程や現在の市場運用、競争促進策(ベースロード市場、常時バックアップ)の現状と課題について詳細に論じた。インセンティブ整合的な市場構築という観点からは、間接的にであれ、プラットフォーム規制のあり方を考える際にも有益な知見が得ることができたと考えている。もう一つは、独禁法による企業結合規制において、どのような経済分析が用いられるのかをまとめたものであり、具体的には、経済学者のUPP(市場支配力の直接立証方法)の説明について、法学の立場からコメントを加えたものである。そこでは、米国の反トラスト経済学者であるWerdenなどが主張するのと同じく、市場支配力の直接立証を行う経済分析を利用したとしても、なお市場画定の必要性がなくなるわけではないことを論じたほか、UPPなどが前提とする消費者厚生基準、とりわけ価格基準(企業結合前後の価格比較で企業結合の違法性を審査する基準)では、両面市場の競争制限効果を十分には評価できないことなどを論じた。その他は、独占禁止法の判例等をまとめる研究を遂行することになったが、並行して、プラットフォーム規制のあり方にかかる文献を精読しており、次年度以降、成果が期待できる状況にある。
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