研究課題/領域番号 |
21K01183
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
橋本 陽子 学習院大学, 法学部, 教授 (00292805)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 違法労働 / 労働者概念 / ドイツ労働法 / EU労働法 |
研究実績の概要 |
2021年度は、ドイツにおいて、従来から東欧からの外国人労働者を劣悪な労働条件で雇用することが問題となっていた、食肉産業における労働条件を改善するため、2021年1月1日から施行されることとなった、労働保護監督法について、検討を行い、論文にまとめた。労働保護監督法によって改正された食肉産業における労働者の権利保障強化法は、食肉産業において請負および派遣を一切認めないという間接雇用の禁止を導入した。ドイツにおいて、食肉産業で就労する労働者数は約15万人と決して多くはないが、直接雇用を義務づけるという規制は、比較法的にも類を見ない新たな規制である(派遣については、立法過程で、経過措置として、部分的に許容されることとなった)。本論文では、かかる法規制の内容および学説の議論について紹介するとともに、さらに、ドイツでは、伝統的に、労働保護法上の規制に関する行政監督が十分ではなく、近年、東欧だけではなく、移民が増えていることを背景として、外国人労働者が劣悪な就労に従事している点が問題になっていることを紹介した。 また、労働者派遣に関して、日本の労働者派遣法の制定から現在に至るまでの立法および裁判例展開について、ドイツ語で論文を執筆した。 その他、最新の重要なEU司法裁判所の判例の検討として、待機時間の労働時間性が争われたEU司法裁判所の2021年3月9日の先決裁定(Case C-344/19,Radiotelevizija Slovenija,ECLI:EU:C:2020:796; Case C-580/19, Stadt Offenbach am Main,ECLI: EU:C:2020:797)について、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツにおいて、違法労働の監督を強化することを目指す労働保護監督法について、論文にまとめることができ、順調に研究計画を進めることができた。 また、EU法に関する最新の動向についても、判例評釈を執筆することができた。その他、日本法について、フリーランスの保護に関する労働法上の課題について論文を公表し、共著で、労働者派遣法の解説書の改訂を出版することができ、最新の判例について判例評釈を執筆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は、違法労働の取り締まりという公法的な労働法の規制という視点から、かかる規制の適用対象者である労働者の概念をどのように考えるべきかという問題を考察するものであるが、引き続き、かかる問題関心に基づいて、EU法およびドイツ法の最新の立法・判例動向を研究していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、5年間を予定しており、毎年の支給額は多額ではないことから、初年度は、次年度以降のためになるべく使用しないでおいた。また、学内で、科研費の新規採択が認められた者に支給される研究費を受給することができたため、2021年度は、本科研費をほとんど使用しないで研究を進めることができた。2022年度は、渡独を予定しており、本科研費をそのための旅費に支給したいと考えている。
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