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2022 年度 実施状況報告書

違法労働の取り締まりに関する日独の法規制と労働者概念

研究課題

研究課題/領域番号 21K01183
研究機関学習院大学

研究代表者

橋本 陽子  学習院大学, 法学部, 教授 (00292805)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード労働法 / 労働者概念 / EU法 / ドイツ法
研究実績の概要

2022年度は、従来からの研究テーマである労働者概念について、アメリカのABCテストやEUのプラットフォーム労働に関する2021年の指令案における労働者性の推定規定を検討して、日本にも同様の推定規定を導入できないかという提案を行った(「労働者性の推定規定の可能性」)。現在、日本の労基法・労契法上の労働者概念は裁判例では狭く解されており、この現状を打開するためには、推定規定の導入が意味を持つのではないかと考えている。また、ドイツの労働者概念について、共著『デジタルプラットフォームと労働法―労働者概念の生成と変容―』において、これまでの労働者概念の歴史的発展経緯を簡潔にまとめたうえで、ドイツにおける労働者概念を転換させた、2021年12月の連邦労働裁判所のクラウドワーカー判決について検討を行った。同判決については、ロルフ・ヴァンク教授の講演会を2022年6月にオンラインで実施し、その講演の翻訳も公表した(「連邦労働裁判所のクラウドワーカー判決」)。
その他、最近のEU司法裁判所の重要判決として、EU域内の国境を越えた労働力移動に関する社会保険法上の規制について検討を行った(「EU域内を移動する派遣労働者に送り出し国の社会保障法の規制が引き続き適用されるための要件」)。EUでは、国境を越えた労働者派遣が広く行われているが、EU法上、送り出し国の社会保障法上の規制が引き続き適用されるための特例によってソーシャル・ダンピングが誘発される事例が頻発している。社会保障法上の特例と各国の労働法上の規制との関係にも不明瞭な点が存在する。この問題は、日本に直ちに参考となるものではないが、現在のEUの労働問題を理解する上で重要な意義をもつといえる。
さらに、男女雇用平等法制に関するドイツ法との比較研究のほか、ドイツ労働法に関する翻訳書(ミヒャエル・キットナー『ドイツ労働法判例50選』)を出版した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

最近のドイツおよびEU労働法の展開について、着実に研究を進めることができた。論文を執筆するだけではなく、ドイツ人研究者の講演会も実施し、日独交流に貢献することができた。

今後の研究の推進方策

今年度も引き続き、ドイツおよびEUの細心の労働法の展開について検討を行い、労働者概念、労働時間法制等、近時の重要問題について研究を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

5年間の研究計画のうち、まだ2年目であり、全体的に抑制的に使用してきたため、次年度交付額が生じたが、今後も海外調査や外国人研究者の招へいも予定しており、順調に支出できる予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (13件) 学会発表 (1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] EU法最新動向研究(12)EU域内を移動する派遣労働者に送り出し国の社会保障法の規制が引き続き適用されるための要件―EU司法裁判所2021年6月3日先決裁定(Cece C-784/19, "TEAM POWER EUROPA" EOOD , ECLI:EU:C:2021:427)2023

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      比較法学(早稲田大学)

      巻: 57巻1号 ページ: -

  • [雑誌論文] コース別人事管理および職種転換制度の運用と女性差別の成否―巴機械サービス事件・東京高判令和4・3・9労判1275号92頁2023

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      ジュリスト1583号・令和4年度重要判例解説

      巻: 1583号 ページ: 199-200

  • [雑誌論文] 多様化するライフコースにおける労働と公正性の保障について考える-ドイツにおける架橋的パートタイム制度と賃金透明化法を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      浅倉むつ子、緒方桂子、橋本陽子
    • 雑誌名

      日本労働法学会誌

      巻: 136号 ページ: -

  • [雑誌論文] 労働者性の推定規定の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      沼田雅之=大原利夫=根岸忠『社会法をとりまく環境の変化と課題・浜村彰先生古稀記念論集』

      巻: - ページ: 45-61

  • [雑誌論文] フリーランスを保護する法制度の方向性2023

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      月刊社労士

      巻: 2023年1月号 ページ: 54-55

  • [雑誌論文] 更新上限制・不更新条項と労契法19条―日本通運(川崎・雇止め)事件・東京高判令和4・9・142022

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1580号 ページ: 4-5

  • [雑誌論文] コンビニオーナーの労組法上の労働者性―セブンイレブン・ジャパン事件(東京地判令和4・6・6重要判例命令127号12頁、労働経済判例速報2488号3頁2022

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      中央労働時報

      巻: 1296号 ページ: 20-28

  • [雑誌論文] 連邦労働裁判所のクラウドワーカー判決2022

    • 著者名/発表者名
      ロルフ・ヴァンク、橋本陽子
    • 雑誌名

      季刊労働法

      巻: 278号 ページ: 87-102

  • [雑誌論文] Writerbildungspolitik in Japan: Die Aufgabe lebenslanger Weiterbildung in Zeiten von Digitaligierung und Covid-19-Krise2022

    • 著者名/発表者名
      Yoko Hashimoto
    • 雑誌名

      Soziales Recht

      巻: - ページ: 204-212

  • [雑誌論文] 二重派遣と労働者派遣法40条の6―竹中工務店事件・大阪地判令和4・3・30労旬2010号54頁2022

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1576号 ページ: 4-5

  • [雑誌論文] ホテルの支配人および副支配人の労基法上の労働者性―スーパーホテル事件意見書―2022

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      学習院大学法学会雑誌

      巻: 58巻1号 ページ: 31-54

  • [雑誌論文] 従業員代表制について―これまでの議論の整理と韓国法から得られる示唆―2022

    • 著者名/発表者名
      李ジョン、橋本陽子
    • 雑誌名

      季刊労働法

      巻: 277号 ページ: 2-13

  • [雑誌論文] 葬儀会社の代理店の従業員と葬儀会社の関係と労働者派遣法40条の6―続ベルコ事件・札幌地判令和4・2・252022

    • 著者名/発表者名
      橋本陽子
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1572号 ページ: 4-5

  • [学会発表] 多様化するライフコースにおける労働と公正性の保障について考える2022

    • 著者名/発表者名
      浅倉むつ子、緒方桂子、橋本陽子
    • 学会等名
      日本労働法学会
  • [図書] ドイツ労働法判例50選2023

    • 著者名/発表者名
      ミヒャエル・キットナー、橋本 陽子
    • 総ページ数
      348
    • 出版者
      信山社出版
    • ISBN
      9784797270365
  • [図書] デジタルプラットフォームと労働法2022

    • 著者名/発表者名
      石田 信平、竹内(奥野) 寿、橋本 陽子、水町 勇一郎
    • 総ページ数
      292
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      9784130361576
  • [備考]

    • URL

      https://researchmap.jp/read0052807

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公開日: 2023-12-25  

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