研究課題
2023年度は、フリーランスの保護のあり方について、2023年5月に制定されたフリーランス新法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)の検討を行い、研究代表者がこれまでに行ってきた労働者概念に関する研究とあわせて新書(『労働法はフリーランスを守れるか―今後の雇用社会を考える―』ちくま新書、2024年)にまとめることができた。同書は、一般読者向けの新書ではあるが、このテーマに関する裁判例や外国法の最新の状況について解説したものであり、学術的な水準は決して低くないものである。このテーマに関する日本法の動向については、2023年9月14日にベルリンで開かれたシンポジウムにおいてドイツ語で報告を行った。また、同書では、日本でほとんど知られていないドイツにおける「闇労働」の規制及び監督について紹介した。これは、本研究課題に直接関係するテーマであり、日本では、偽装自営業の問題が税法・社会保険法を潜脱するものであり、刑罰が科されるべき犯罪であるという認識はほとんどないが、国境を越えた労働移動の負の側面としてヨーロッパでは重要な課題となっていることを紹介することで、今後の日本における労働監督制度の在り方について問題提起を行った。その他、最近のEUおよびドイツにおける労働法の展開について研究を進め、ドイツにおける労働時間法の改正の動きについて論文を執筆するとともに、ドイツ人研究者および実務家の複数の論文の翻訳を行った。また、2024年3月8日にミュンヘンで開かれたシンポジウムにおいて、日本の雇用差別禁止法についてドイツ語で報告を行った。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に記したとおり、これまで従事してきた労働者概念の研究を着実に進めることができ、またEUおよびドイツの労働法全般について、最新の動向を理解し、日本に紹介することができた。
2024年度は、6月1-2日に開催される比較法学会において、2022年に共著『デジタルプラットフォームと労働法―労働者概念の生成と展開―』(東京大学出版会)を出版したが、その共著者とプラットフォーム就労の保護のあり方について報告を行う予定である。また、まだ確定していないが、2024年9月半ばにローマで開催される国際労働法・社会保障法学会の世界会議において、韓国、中国および台湾の労働法研究者らと「東アジアのプラットフォーム労働」というテーマで報告できないかと応募している。このように労働者概念について、引き続き研究を進める予定であるほか、EU法およびドイツ法の最新の動向についても引き続き検討を進める予定である。
2025年9月にドイツとの国際シンポジウムを開催する予定であり、そのために多額の支出が見込まれることから、2023年度と2024年度は科研費を使用しないようにしているため。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (11件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
日本労働研究雑誌
巻: 764 ページ: 107-121
学習院大学法学会雑誌
巻: 59巻2号 ページ: 73-94
武井寛・;矢野昌弘・緒方桂子・山川和義編『労働法の正義を求めて―和田肇先生古稀記念論集―』
巻: - ページ: 441-460
武井寛・矢野昌弘・緒方桂子・山川和義編『労働法の正義を求めて―和田肇先生古稀記念論集―』
巻: - ページ: 192-215
ジュリスト
巻: 1593 ページ: 4-5
労働法律旬報
巻: 2040 ページ: 46-52
巻: 1589 ページ: 4-5
Duewell, Franz-Josef, Haase, Karsten (Hrsg.), Arbeit und Recht im gesellschaftlichen Wandel: 25 Jahre Gesellschaften fuer Arbeitsrecht in Deutschland und Japan
巻: - ページ: 189-210
巻: 59巻1号 ページ: 99-142
巻: 2033 ページ: 6-14
巻: 1585 ページ: 4-5