本研究は、締約国が障害者権利条約を国内政策に反映させづらいのかを検証するものである。タイの例から、条約に合致する政策を実現するために既存の制度に大幅な変更や予算を要する場合に政策修正に躊躇すること、特に障害政策決定機関が官僚主導型である場合にはその傾向が強まること、政策修正が実現した場合も、予算や負担の少ない方法を選択していることがあきらかになった。オーストラリアの例から、障害者権利委員会による授産施設の廃止や最低賃金の保障などの勧告に対し、政策体系を大きく変えてしまうこと、および勧告の内容に結果を向上させる根拠が明確でないこと、から担当省庁が政策の修正に躊躇していたことがあきらかになった。
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