研究課題/領域番号 |
21K01186
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研究機関 | 西南女学院大学 |
研究代表者 |
木村 茂喜 西南女学院大学, 保健福祉学部, 准教授 (90331024)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 犯罪をした知的障がい者 / 社会復帰 / 自立支援 / 伴走型支援 / 多機関連携 |
研究実績の概要 |
学会発表「犯罪をした知的障がい者の自立支援と社会保障法」およびこれを基にした同名の学会誌掲載論文では、犯罪をした知的障がい者が社会復帰し、自立するための支援を受ける権利とその権利の実現のために必要な法政策の方向性について考察した。その内容は、まず、知的障害があるということ、犯罪をしたということという、犯罪をした知的障がい者の自立を阻む2つの社会的障壁を除去するための現行の法制度について確認したうえで、これら社会的障壁は、犯罪をした個人と社会との相互作用によるものであると考える「社会モデル」的視点に立脚して、犯罪をした知的障がい者のニーズをとらえることで、犯罪をした知的障がい者が社会復帰し、自立生活をするために、社会が支援する必要性を導く可能性について指摘した。次いで、犯罪をした知的障がい者の社会復帰と自立支援に必要な法政策の方向性として、「伴走型支援体制の構築」、「支援の継続性」および「多機関連携」を挙げ、とりわけ、重層的支援体制整備事業において、刑事司法機関や地域生活定着支援センターをも含めた多機関連携体制の整備の必要性について指摘した。さらに、犯罪をした知的障がい者が、自立支援を拒否する場合の支援体制について、更生保護の枠内のみならず、アウトリーチや、犯罪をした知的障がい者の支援を受ける権利の保障をも含めた、多機関連携による継続的な伴走型支援を行うための、さらなる立法措置を講じる必要性について指摘した。 本実績は、犯罪をした者に対する支援について、刑事政策および社会保障法の現状を概観することで、犯罪をした者が、社会復帰するための支援の規範的検討を通した、犯罪をした者の社会復帰と自立支援の法理論の基礎固めができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、上記学会発表およびこれを基にした学会誌掲載論文の執筆に注力した。これに加えて、犯罪をした者に対する福祉的支援の現状と課題について、国内施設における調査及びヒアリングを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、施設に出向くことが困難になったことにより、調査及びヒアリングを行うことができなかった。また、ドイツについても、上記学会発表に注力したため、事前の準備ができず、ヒアリング等を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、犯罪をした者の社会復帰と自立支援のための法理について、理論的にさらに深化させるとともに、関係行政機関や支援団体等にヒアリングを行うことを通じて、犯罪をした者の生活支援の実態と課題の把握と併せて、犯罪をした者の自立と社会復帰に重要となる就労支援についても、障害者雇用促進法、生活困窮者自立支援法など、多岐にわたる現行のわが国の法制度がどのように機能しているのか明らかにしたいと考えている。加えて、ドイツにおいても、文献研究と併せて、関係機関等に対してメールまたはオンラインによるヒアリングを実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度において報告を行った日本社会保障法学会第76回大会は、当初は和歌山大学において対面で開催する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、急遽オンラインによる開催となった。さらには、新型コロナウイルス感染症の影響で、研究会・学会への参加もすべてオンラインとなったことで、旅費の使用ができなかった。また、同様の理由でヒアリングを実施できなかったことで、旅費のほか人件費・謝金の使用もできなかった。 2022年度以降も、新型コロナウイルス感染症の影響により先行きは不透明だが、2022年度後半以降の一部の学会・研究会については、対面で行う予定のものもあることから、旅費については適切に使用していきたい。 人件費・謝金についても、新型コロナウイルス感染症の状況に応じて、ヒアリングを実施することで、適切に使用していきたいと考える。
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