研究課題/領域番号 |
21K01191
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋爪 隆 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70251436)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 刑法 / 刑事法 / 性犯罪 / 盗撮 |
研究実績の概要 |
本研究は、①同意に基づかない撮影行為及び撮影データの拡散にかかる行為の処罰に関する研究、②撮影データ及び複製物の没収・消去の手法に関する研究に基づき、盗撮行為等による被害を有効に防止できる刑事法制について、理論的・立法論的検討を加えるものである。前者①は、現在、同意なく他人を撮影する行為について法律レベルでは処罰規定が設けられていない点にかんがみ、外国法の状況を参照しつつ、立法論的な提言を目指すものである。また、後者②は、データやその複製物の没収・消去の在り方について、現行法の没収規定で対応可能な範囲を明らかにした上で、付加刑としての没収の対象物件の拡張、さらに有罪判決を前提としない剥奪処分の可能性について理論的な検討を加えようとするものである。これらの課題については、2023年2月に研究代表者が委員として参加していた法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会で一定の方向性が示され、その後の国会審議を経て、同年6月には法改正が実現するに至った。 2023年度の研究においては、これらの立法過程を精査するとともに、改正法の解釈論上の課題について、検討を加えた。たとえば誤信類型における誤信の内容などについては、法制審議会刑事法部会においても必ずしも十分な議論が行われていないが、限界事例を想定すると、なお課題が残されている。これらの解釈論的な課題についての研究成果について公表準備を進めており、次年度中に公表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度に大幅な法改正が行われたため、改正法の解釈論的な帰結について検討する必要が新たに生じたが、多くの課題があり、なお包括的な検討を進めるに至っていない。このため、研究期間を1年間延長した上で、2024年度中に一定の成果を公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究においては、実務の動向を可能な限り調査した上で、改正法案の内容について検討を加え、一定の解釈論的な提言を行うことを最優先の課題とすることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内出張などの予定が延期になったこと、また、購入予定の国内外の関連文献の公刊時期が遅れたことなどから、次年度使用額が生じている。これらについては次年度に繰り越した上で、研究計画は実質的に変更することなく、執行する予定である。
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