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2023 年度 実施状況報告書

刑事責任能力鑑定における精神障害が犯行に与えた影響の機序の描出と読解に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K01192
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

岡田 幸之  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40282769)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード精神鑑定 / 刑事責任能力 / 機序
研究実績の概要

【目的】本研究では、医学的に行われる精神鑑定のどのような情報をどのようにして法律上の刑事責任能力判断に利用するのか、という方法論を具体的に示すことを目的としている。主に「責任能力に関する刑事裁判例集(法曹会、1990)」に掲載された判例を題材としてこれを検討し、「刑事責任の緑判断の8ステップ構造モデル」を整理した上で、さらにその描出と読解の具体的な方法を検討した。
【成果】刑事責任能力の判断にあたって機序を扱かう場合、機序の描出にあたっては現在の日本における刑事責任能力の判断が生物学的要素と心理学的要素の両者を扱う「混合説」に立っていることから、機序についても「混合説」に立つ必要があることを示し、生物学的要素の機序である「精神現象機序MMP; mechanism of mental phenomena」と心理学的要素の機序である「犯行機序MC; mechanism of crime」の2つに分ける方法を提示した。
精神現象機序MMPについては、精神医学で一般に採用されている生物・心理・社会学的モデルbio-psycho-social modelにならい、「生物学的精神現象機序biological MMP」「心理学的精神現象機序psychological MMP」「社会学的精神現象機序sociological MMP」に細分化した。
機序の読解にあたっては心理学的要素を従来の事理弁識能力と行動制御能力からさらに「心理学的4要素」として、「行為の意味性質の弁識能力NQ」「行為の善悪の弁識能力RW」「衝動抑止の能力RI」「意思行為一致の能力CC」に分けることを提案するに至った。
ここまでの主要な実績として「法律家による刑事責任能力判断のための機序読解方法論─8ステップ構造モデル理論を超えて(判例時報2537、2023)を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初は、「8ステップ構造モデルから」、「機序」の精神医学的な描出の方法と法学的な読解の方法をまとめるという単純な計画であった。しかし具体的な判例を題材にして理論的な検討を重ねたところ、さらに描出にあたっては、生物学的要素の機序である「精神現象機序」と心理学的要素の機序である「犯行機序」に分けて整理すべきこと、読解にあたっては心理学的要素を従来の事理弁識能力と行動制御能力からさらに「行為の意味性質の弁識能力NQ」「行為の善悪の弁識能力RW」「衝動抑止の能力RI」「意思行為一致の能力CC」に分けることを提案するに至り、これを2023年度には論文としてまとめることができた。現在までの進捗状況としては、予定よりも進んだ成果を得ることができているといえる。

今後の研究の推進方策

ここまでの成果を6月に開催される日本司法精神医学会で報告し、さらにその内容を論文化する(2025年3月掲載予定)。これにより本研究を完了する。そしてこれらの成果をもとに、2024年度以降の研究「刑事責任能力判断のための犯行機序の精神医学的描出と法学的読解の方法論の確立」に引き継ぐ計画である。

次年度使用額が生じた理由

現在、研究成果を2本の論文を作成して学術誌に投稿しており、審査を受けている。これらの論文が受理された際の論文掲載料として、使用する予定であるため。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 法律家による刑事責任能力判断のための機序読解方法論-8ステップ構造モデル理論を超えて2023

    • 著者名/発表者名
      岡田幸之
    • 雑誌名

      判例時報

      巻: 2537 ページ: 74, 92

  • [雑誌論文] 性犯罪被害者の精神鑑定 司法精神医学からみた性犯罪被害者の精神鑑定 性犯罪被害者の鑑定の4つの特殊性と対応のポイント2023

    • 著者名/発表者名
      岡田幸之
    • 雑誌名

      司法精神医学

      巻: 18 ページ: 61, 64

  • [学会発表] ”真実”と精神鑑定2023

    • 著者名/発表者名
      岡田幸之
    • 学会等名
      日本犯罪学会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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