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2021 年度 実施状況報告書

データ駆動型警察活動の法的規律

研究課題

研究課題/領域番号 21K01193
研究機関一橋大学

研究代表者

緑 大輔  一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50389053)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード情報プライバシー / 客観法 / 法律留保原則 / 犯罪捜査 / データ駆動型警察活動 / 警察活動の制御 / 強制処分法定主義 / 令状主義
研究実績の概要

2021(令和3)年度は、警察活動にかかわる現代的な問題に取り組みつつ、本研究の基盤となる捜査法の研究を整理する作業を遂行した。
具体的には、第1に、捜査機関が被疑者に対して内視鏡検査を実施することの適否について、裁判例を素材に分析し、違法収集証拠排除法則の観点から制御する方法について検討した。当該裁判例には、客観法的な思考を読み取ることができることを例証した。データ駆動型警察活動の制御にかかわる基本的な発想を構築するための一助とするものである。
第2に、遺留物領置に関連して、私有地敷地内のごみ容器・ごみ集積所からごみを領置し、DNA資料を入手することの適否について、日本とアメリカの裁判例や議論を分析した。DNAデータベースの構築の入口となる、DNA資料の入手に対する法的規制の在り方を検討することを通じて、データ駆動型警察活動の前提となるデータベースと関連して、基礎データの収集に対する歯止めの必要性を検討するための一助とするものである。
第3に、著書『刑事捜査法の研究』を刊行することによって、本研究の前提となる先行研究に対する分析と、研究代表者自身の研究の整理を行った。同書の中では、(1)GPS動静監視、(2)遺留物領置、(3)逮捕に伴う被疑者の携帯電話機内のデータの検索、(4)通信および会話の傍受などの各論的分析を行う論稿とともに、(5)捜査において法的根拠を要する活動が何かに関する論稿、そして(6)捜査法の方法論に関する学説史的分析を行う論稿を併せて収録した。これら論稿を加筆して掲載することにより、本研究の現況を反映させ、現在の状況に即応した議論を提示した。
第4に、伝統的な対物的処分にかかる捜査の適否を判断した裁判例を分析し、学習者向けの教材として公刊した。その中で、令状主義の在り方について再考する作業を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、当初計画の中で予定していた、台湾およびアメリカに渡航してのインタヴュー調査は見送らざるを得なかった。しかし、当初計画の中でこの事態は織り込んでおり、次善の計画として予定していた、データベース等を利用した文献調査や書籍の収集を遂行することを以て、代えることとした。これにより、データ駆動型警察活動に関する文献収集を、特に刑事法および憲法に関するものを中心に円滑に実施できている。また、台湾については、近時の状況についてオンラインで台湾の刑事訴訟法研究者から事情を聴取する機会を設けることができた。
以上のような調査と並行して、本研究課題に関係する内容を有する論文2点と単著1点、その他学習用書籍等の刊行を行うことを通じて、伝統的な捜査法の枠組みを整理する作業を行うことができた。特に、内視鏡検査に関する裁判例に関する研究においては、関係する弁護人から事情を聞き、また、執筆した論文の草稿に対してコメントをしてもらうなどの作業を通じて、警察活動に対する有効な規律の実現と先行して示されている証拠排除に関する下級審裁判例との整合性の両立を意識することができたものと考える。これにより、本研究課題の基礎的な作業の一部を実施することができた。
また、研究にかかる人的関係を維持するために、北大刑事法研究会、瀬戸内刑事法研究会、刑事司法研究会等の各研究会にそれぞれオンラインで参加した。これら各研究会は、次年度以降の本研究課題の遂行および発表のための機会を確保するための作業の一環として、意義を有していたものといえる。

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルス感染症の流行状況と、各国の出入国時の移動制限の状況を確認しつつ、海外での調査を実施するか否かを判断していく予定である。そのため、アメリカおよび台湾の調査については、引き続き文献調査やオンラインでのインタヴュー調査に代替して実施することも意識して研究を推進していくものとする。
データ駆動型警察活動に伴うプライバシーの制約の側面について、特に研究を重点的に行い、現状の法的規制の在り方と今後の展望について、一定の成果を生み出すことが2022(令和4)年度の目標である。このことに関連して、プライバシーの問題に精通している法律実務家および研究者との意見交換を行う予定である。
併せて、2021(令和3)年度に引き続き、各研究会にオンラインまたは対面の形式で参加し、緊密な人的関係を構築・維持していくとともに、適宜の時機に研究発表を行っていくことを考えたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、海外渡航を伴う調査を断念した。代替として、当初計画に次善の計画として挙げていた、文献調査とオンラインによるインタヴュー調査を実施した。また、国内の研究会がほぼすべてオンライン実施となった。その結果、旅費の支出が生じなかった。代わりに文献調査を多く実施したため、物品費支出が増大し、差し引きした結果、残額が発生した。
2022年度以降の状況をみて、海外への渡航調査および国内の研究会・学会への出張を伴う参加を行う予定であり、そこで旅費として執行する予定である。旅費の執行が引き続き困難に陥る場合には、オンラインでの調査およびインタヴューをより効率的に実施するために、必要な電子機器の更新に予算を振り替えることを検討する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 令状請求時の違法とその重大性の関係2021

    • 著者名/発表者名
      緑大輔
    • 雑誌名

      季刊刑事弁護

      巻: 108 ページ: 111-119

  • [雑誌論文] 事例から学ぶ違法収集証拠排除を導く要素2021

    • 著者名/発表者名
      緑大輔
    • 雑誌名

      季刊刑事弁護

      巻: 108 ページ: 74-78

  • [雑誌論文] なぜ法学を学ぶのか2021

    • 著者名/発表者名
      緑大輔
    • 雑誌名

      法学教室

      巻: 487 ページ: 12-19

  • [図書] 刑事捜査法の研究2022

    • 著者名/発表者名
      緑大輔
    • 総ページ数
      432
    • 出版者
      日本評論社
    • ISBN
      978-4-535-52618-1
  • [図書] 判例学習刑事訴訟法(第3版)2021

    • 著者名/発表者名
      葛野尋之、中川孝博、渕野貴生(編)、緑大輔、斎藤司、石田倫識、正木祐史、笹倉香奈、伊藤睦、黒川亨子、関口和徳、高平奇恵、松倉治代
    • 総ページ数
      406
    • 出版者
      法律文化社
    • ISBN
      978-4589041609
  • [図書] 寺崎嘉博先生古稀祝賀論文集上巻2021

    • 著者名/発表者名
      山口厚ほか編
    • 総ページ数
      512
    • 出版者
      成文堂
    • ISBN
      978-4-7923-5342-1

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公開日: 2022-12-28  

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