研究課題/領域番号 |
21K01194
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
永井 善之 金沢大学, 法学系, 教授 (50388609)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 暗号資産 / 電子マネー / キャッシュレス / 財産犯 / 刑法 / 経済刑法 |
研究実績の概要 |
我が国の現行刑罰法規は、営業秘密等のごく一部を例外として、その無体性ゆえの範囲限定の困難性等のゆえに、情報自体の不正取得等を罰する規定を有しないが、このような刑法体系にあっては、電子決済の急激な普及に伴い電子マネーや暗号資産といった電子的財産情報自体が通貨に匹敵するほどの機能を営むまでに至った現代において、これら財産情報に化体された財産的利益の保護や、それらを用いる決済システムの安全性、それへの信頼等の保護を十分に図ることが困難でありうる。そこで本研究では、現行法によるその保護の可能性と限界を明らかにしつつ、それら財産情報とそれに係る規制対象行為類型の適正かつ明確な輪郭づけを試みることで、これら諸利益を十分に保護しうる、キャッシュレス時代に相応しい刑罰規定のあり方を探究することを目的とする。3年の研究期間の初年度たる令和3年度においては主に、このような刑法的保護体系の構築のための前提的考察として、我が国における金融関係法規における電子的財産情報関連の諸規制を、近時の法改正によるものも含めて総合的に分析することに注力した。そこからは、暗号資産に係る業規制の確立や、取引関連規制を通じて資金調達主体、取引媒介者、投資家等の各プレイヤーに係る一定の規律が設定され資金調達や投資家保護のための法的枠組みが整備されたことは評価されうること、他方で、これら関連規制の具体的適用範囲等については、その技術的な複雑性と金融システムの多様性とが相俟って、必ずしも抽象的一律的には確定されえない部分もあることなどが明らかとなった。これらの分析と共に、今年度においては、本研究の関連的ないし波及的な課題となる、いわゆるデジタルプラットフォーム事業者における情報の取扱いとの関係での法的規制等についても、その比較法的分析も含めた考察に着手しており、これは次年度においても継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄にて前述した令和3年度の研究進捗状況が当初計画通りであること、また、以上の成果の公表も行い得たことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究での前提的考察としての我が国現行法の分析を主たる内容としつつ、「研究実績の概要」欄にて前述したような成果を得た。もっとも、ここで検討し得た内容は我が国現行法における暗号資産関連規制にとどまるものであることから、これに限られない電子的財産情報にも考察対象を拡大し、また比較法的分析も実施する予定である。また、これらとともに、既に着手しているデジタルプラットフォーム事業者における情報の取扱いとの関係での法的規制等に係る考察についても継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較法研究に係る国外出張を予定していたところ、世界的な新型コロナウイルス感染症の影響により、これを次年度以降に延期したことが主たる理由である。このように、次年度使用額が生じた理由は研究遅延といった事情によるものではないため、本研究の全体計画において助成金使用計画に大幅な変更等はない。
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