研究実績の概要 |
当時の実務書を参考に、依頼者と直接やりとりするソリシタの役割を分析した上で、17世紀後半から18世紀前半のオールドベイリ裁判資料のうち、事務弁護士であるソリシタに対する証人尋問が行われた事件を中心に分析を行った。 イギリスにおける法律の専門家が、BaristersやAttorneys、Solicitors、Scrivenersなどの多様な職種があることを踏まえて、分析した。 Baristersの役割は、主として、法廷において、証拠の提出や法的議論することであった。AttorneysとSolicitorsの役割は、訴訟の準備や依頼者への助言をする役割であった 。このうち弁護士(Counsel)といわれるのは、Baristersのみであって、その他は、法律助言者(Counselor)と呼ばれていた 。証言拒否が認められたとされる事例は、その多くがCounselに関するものか、Counselと関係するCounselorに関するものであった 。 特に、1721年発刊の実務書では、夫婦や利害関係者の証人など、偽証の危険性が高い人物の証人適格を否定する一方で、裁判官や陪審員であっても証人適格の例外にあたらないとされていた(2 HAWKINS, PLEAS OF THE CROWN (reprint, Professional Books, 1973[1721]), at 431-)。実際に、とSolicitorが、依頼者である被告人に関連して、証人として呼ばれることが散見された(たとえばRadcliffe v. Fursmanなど)。とりわけAnnesley v. Anglesea, 17 How. St. Trial 1139 (1743)では、依頼者に関するとSolicitorの証言拒否権が明確に否定されているため、18世紀まで、同特権はまだ形成されていなかったことは明らかとなった。
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