研究実績の概要 |
当時の実務書を参考に、依頼者と直接やりとりするソリシタの役割を分析するとともに、17世紀後半から18世紀前半のオールドベイリ裁判資料のうち、事務弁護士であるソリシタに対する証人尋問が行われた事件を中心に分析を行った。この時期、ソリシタが、依頼者である被告人に関して、証人として呼ばれることは珍しいことではないことがわかった。特に、Annesley v. Anglesea, 17 How. St. Trial 1139 (1743)では、依頼者に関するソリシタの証言拒否権が明確に否定されており、弁護士依頼者間秘匿特権は、いまだ確立していないことが確認できた。 また各国の秘匿対象となる情報を分析した。秘匿対象は、基本的に、弁護士の法的助言に限られるが、その範囲は、とりわけ社内の既存文書において取り扱いが異なった。アメリカ法(Upjohn Co. v. United States, 449 U.S. 383 (1981); Motley v. Marathon Oil Co., 71F.3d 1547,1550-51(10th Cir.1995)など)、イギリス法(P(Prudentiial PLC) v. Special Commissioner of Income Tax [2013] 2 AC 185; R v. Derby Magistrates’ Court, ex p B [1996] 1 AC 487 (HL) など)、EU法(AM&S, Case 155/79 [1983] QB 878; , Joined Cases T-125/03 and T-253/03 Akzo Nobel Chemicals and Akcros Chemicals v Commission (2007)など)の秘匿対象について、事例ベースでの違いを分析して、背景にある考え方を検討した。ガイドライン等による量刑等の見通しの度合いが英米でも具現化に影響を与えることがわかった。
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