研究課題/領域番号 |
21K01203
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
星 周一郎 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (10295462)
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研究分担者 |
前田 雅英 東京都立大学, 法学政治学研究科, 客員教授 (60009842)
木村 光江 日本大学, 法学部, 教授 (50169942)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自動運転 / サイバーセキュリティ / 情報の共有 / 刑事過失責任 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、当初の分担予定を若干変更し、サイバーセキュリティ論やサイバー空間におけるプライバシー保護のあり方について、研究分担者の前田、木村との打合せに基づき、研究代表者である星においてもいくつか検討を行った。そして、サイバーセキュリティ確保には法執行が重要であり、官民の情報共有の意義も高まっていることから、その体制整備が必要であること、サイバー空間で新たなプライバシー領域が生じつつあり、サイバー空間での犯罪捜査手法のあり方について、従前の刑事手続法との整合性を維持しつつ新たな方策を考える必要があること、悪質交通事犯に規範的要素・主観的を多用する刑事責任追及の構成の問題性などを明らかにし、その成果をいくつかの論文として公表した。この研究分担の変更は、星が、日本刑法学会第99回大会で、ワークショップ4「サイバーセキュリティと刑事法」のオーガナイザーを務めたこととも関連する。 前田においては、自動運転レベル2の交通事犯における過失責任の内実を明らかにするため、裁判例の分析を踏まえた検討を行い、刑事責任の帰責のあり方や、事故原因の解析のための自動運転車の挙動に関するデータの記録・保存が不可欠であることなどの研究成果を論文として公表した。さらに、サイバーセキュリティ論の実務的動向に関する情報収集、判例の見解を踏まえた検討の準備作業をすすめた。 木村においては、令和3年度警察庁委託事業の委員として、自動運転の実現に向けた諸外国の動向やレベル4相当の自動運転に関連する法制度の研究を行い、『令和3年度 自動運転の実現に向けた調査研究報告書』の作成に携わったほか、基礎的研究を行った。 これらは、いずれもレベル3以上の自動運転、交通事犯発生時の責任追及のあり方に関して、データの取得や保存、それらに基づく捜査等に関してどのような方向性があり得るかの検討の基礎となる成果であると位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のテーマは、まさに毎年という頻度で状況が変化しつつある分野であり、最新の状況の的確な把握を念頭においたうえでの情報収集作業が、研究の効果的な展開のために重要となる。この点に関して、最新の判例・裁判例の動向を踏まえた動向や、政府における自動運転技術の開発動向等に関する情報収集を、一定程度以上のレベルで行うことができたと考えている。 また、研究テーマの一部については、すでに分析・検討を終え、その成果を公表してもいる。 以上のような理由から、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
自動運転自動車技術の開発に関しては、現在、政府の成長戦略の一環としても位置づけられており、さらには、デジタル社会の実現に向けた重点計画や官民ITS構想・ロードマップの一部としても位置づけられている。現実に即した議論を展開する上でも、このような近時の動向、さらには、アメリカやEUを中心とした国際動向の状況把握に努めていきたい。その上で、刑事過失責任の新たな構成や、それを適切に認定するための、データの取得・保存・活用の法的な許容枠組みについて考察を続けていきたい。また、その際には、何よりも事故防止につながるような仕組みを視野に入れることが肝要であると考えている。 以上のような認識に基づき、今後、さらに研究を推進していくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋書の購入に関して為替レートの変動があったため、若干の余剰が生じた。 次年度に繰り越し、物品費として使用する。
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