研究課題/領域番号 |
21K01208
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平岡 義博 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 上席研究員 (00786444)
|
研究分担者 |
稲葉 光行 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80309096)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 科学的証拠 / アンケート調査 / 科捜研の女効果 / 模擬裁判 / 意思決定 / PCASTレポート / 韓国 / 台湾 |
研究実績の概要 |
2021年度は、隔月ごとに研究会議を開催し(計6回)、科学的証拠を適正に活用するための方策を立案するための調査ならびに戦略についての検討を行った。 1 市民や法律家が科学的証拠に対する理解度を調査するため、Webにより予備調査と本調査を実施することにした。アンケートは、科学的証拠の情報がテレビドラマから影響されること(科捜研の女効果)が想定されるため、この点を重視している。2022年5月実施予定。 2 裁判での科学的証拠の使われ方について、模擬裁判員が事件を見てどのように意思決定するか、映像または画像(パワーポイント)を閲覧し、アンケートで判断とその理由を問うものである。類似の研究調査についての文献を調べ、事件状況・証拠資料・鑑定情況などの条件設定を策定した。2022年8月実施予定。 3 科学的証拠の適正な活用についての文献を調査し、アメリカのPCASTレポートを検討した。このレポートは科学的証拠の扱いについて、法律家と科学者の視点から提言しており、科学的証拠を裁判に適正に使用するための知見が多く含まれている。そこでこのレポートを全訳し、解説を付けた論説を出版することとした。現在、校正中である。 2021年度中に計画した韓国・台湾への視察は、コロナ禍の中で困難であったため、韓国警察大学へのメールやZOOMでの調査を行い、韓国における鑑定システム・鑑定の種類・証拠資料のあり方など有益な情報が得られた。台湾については現在の所、調査先を打診中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1 海外渡航制限のため、予定通りに視察が実現していない。 2 大学内でも対面の会議が困難で、想像以上に研究者の一体感が醸成しにくい。 3 研究分担者の一人が東京へ異動し、二名の研究分担者の学内での業務が過重であるため、会議日程調整だけでも大変である。
|
今後の研究の推進方策 |
このような状況の中で、どんな研究が可能か検討した。その結果は次の通りである。 1 少なくとも2つの研究テーマのアンケート調査とその解析を行う。 2 海外渡航はできなくとも、ZOOMでの会議を開催し、意見交換を行う。 3 現在の課題に加え「法律家と科学者」または「司法と科学」のあり方を研究テーマに加える。 両者には、意思伝達の不通が存在し、相互に理解し合えない問題がある。科学的証拠が重要視される中でも、法律家はこれを十分理解しようとせず、一般の科学者も司法には係わろうとしない傾向が強い。この問題は、単に対策ですむ問題ではなく、現在の司法のシステムの問題で、今後、検討を要するものと考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定した、海外視察(韓国・台湾)がコロナ禍のため実行できず、これに係る経費約60万と謝金等執行できなかったためである。 この経費は、2021年度に研究調査を行った「PCASTレポート(翻訳と解説)」の出版費として使用する予定である。
|