研究課題/領域番号 |
21K01212
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 協同組合法 / 非営利法人法 / 非営利組織法 / 農協 / 漁協 / 生協 / 非営利法人 / 非営利組織 |
研究実績の概要 |
わが国の協同組合諸法のうち農業協同組合法・水産業協同組合法・消費生活協同組合法における員外取引規制について考察した。前二法については双方とも農林水産省が監督官庁であるからか、法律の建付け・内容が総じて類似している。員外取引規制についても組合員による事業利用分量の一定割合までという制限があるものの、原則として員外取引が一般的に許されている点で共通する。しかしながらより細かく吟味すると、上記分量・割合の計算の仕方に小さくない差異が認められる。差異が生じる理由を立法理由を参考にして確認した。そのうえでこのような差異は、組合員が行う事業が「農業」あるいは「漁業」であるのかという点に主として関係し、協同組合の特質からは導き出せないという結論に至った。 これに対して消費生活協同組合法では、員外取引は原則として許されていない。ただし一般的とはいえない員外取引を一つ一つ具体的に限定列挙したうえで例外的に許容している。前二法についても例外規定がかなり複雑であるが、それにも増して消費生活協同組合法では例外規定の定め方自体が複雑すぎるという形式上の問題点をまず指摘できる。 内容上についても消費生活協同組合法では前二法と比べて、員外取引規制があまりにも厳格である。同じ協同組合でありながら、なぜこのように異なるのかは、協同組合の特質に根ざした員外取引理論からは導き出せない。事業上の競合者の政治力によるとしか説明できないという定説を、消費生活協同組合法の制定から現在までの改正の際の議論を辿りながら検証した。 このうち水産業協同組合法についての考察結果の一部は、口頭で報告した(下記〔学会発表〕の欄)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究遂行に必要な文献は海外のものも含めて収集したうえで、精読を続けている。しかし研究計画で予定していた関連団体へのヒアリングがコロナ禍の中で実施できなかった。 上記諸事情を考慮に入れて、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの終息が見通せない現在の状況を前提にすると、上記ヒアリングができるようになるのかどうかは予断を許さない。それゆえ確実に遂行できる文献の精読を引き続き中心として研究を進める。 具体的には2021年度考察できなかった中小企業等協同組合法における員外取引規制を取り上げる。加えて比較法の対象とするドイツ協同組合法における員外取引規制を取り上げる。現行の同法では員外取引規制は定款自治に完全に委ねられているが、1899年原始ドイツ協同組合法あるいはその原型であるプロイセン協同組合法に遡って規制の変遷を辿る。ドイツ協同組合法ではわが国の現在の法的状況と同じく、協同組合の種類別に員外取引規制が異なっていた時期もあり、一世紀かけて種類別の規制が撤廃された。変遷を辿ることによってその時時の立法趣旨を考察することは、わが国の法的状況について評価する際に参考になると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは次の二つの理由による。一つは、2021年度に予定していた出張がコロナ禍のため遂行できなかったためである。もう一つは、2021年度に購入予定の図書の公刊が2022年度以降にずれ込んだためである。 繰り越した額は、2022年度に公刊予定の図書の購入費、研究遂行のための出張費、仮想空間における遠隔研究会参加に必要となる機材購入費等に充てる予定である。
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