本研究は、「フィデューシャリー・デューティー」の語が主に金融業界において広く知られるようになってきた日本の現状を踏まえて、信認義務(fiduciary duty)の語の本来の意味を、その発祥の地である英国や、コモンウェルス諸国(特にオーストラリア)における議論を参照しつつ、改めて確認しようとするものである。結果として、受認者(fiduciary)には多様な者が含まれること、受認者とされる者が負う義務のすべてが信認義務であるわけではないこと、過度な影響力(undue influence)の行使法理などの隣接する法理との境界線は必ずしも明確でないことなど、複雑な様相が明らかになってきた。
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