研究課題/領域番号 |
21K01229
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山本 研 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (90289661)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 事業再生 / 準則型私的整理 / 法的倒産手続 / 裁判外ワークアウト / 事業再生ADR / 簡易再生 / 産業競争力強化法 |
研究実績の概要 |
本研究は、私的整理における再建計画について対象債権者全員の合意を得ることができない場合に,法的倒産手続に円滑に接続することを可能とすることにより,迅速かつ実効的な事業再生を実現しようとするものであり,そのための方策として,私的整理において行われた手続の一部を以て、法的手続における手続に代替することによる「合流型」の連携について構想し、そのための具体的手続について立法論的に検討しようとするものである。 研究期間1年目の令和3年度においては、新たな検討のプラットフォームとして合流型(途中乗車型)連携の基本構想を確立し提示することとし、日本民事訴訟法学会大会(2021年5月21日・22日〔開催校:東北大学(オンライン開催)〕)における大シンポジウム(「倒産法の立法的検討」)においてパネリストの一人として,本研究課題に関連するテーマ(「私的整理と法的倒産手続の新たな連携」)について報告を行うとともに、シンポにおける報告内容および質疑応答について、加筆修正の上、民事訴訟雑誌に公表した。また、シンポジウムに向けた準備過程において、シンポジウムのメンバーや、本研究テーマに関心を持つ研究者・実務家との意見交換を通じて情報提供を受けることにより、わが国における最新の動向を踏まえながら、研究を進めた。 他方、私的整理による法的倒産手続の代替を推し進めた場合に生じ得る、法的手続の形骸化・法的規制の潜脱という問題について、プレ・パッケージ型の倒産手続との関係で理論的検討の蓄積(サブローザプランに関する判例法理)があるアメリカ倒産法を参照することにより検討を進めることを予定していたが、コロナウィルス感染症の影響により資料収集/情報交換のための米国出張ができなかったため、こちらについては基礎的な文献の分析作業が中心となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】において記載したとおり、令和3年度の日本民事訴訟法学会大会における大シンポジウムにおいて、合流型の連携構想について報告することにより、検討のプラットフォームとして合流型の連携の基本構想を提示する点については、概ね予定通り進行した(シンポジウムにおける報告原稿および質疑応答について加筆修正したものを既に民事訴訟雑誌に掲載する形で公表するに至っている)。 他方、本研究テーマとも深く関係する産業競争力強化法について、令和3年6月に改正法が成立したことから、この改正を踏まえた新たな動向について検討を進める必要が生じ、この点に関する検討については、若干遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、産業競争力強化法の令和3年度改正との関係についての検討と並行して、私的整理による法的手続の代替により生じ得る法的手続の形骸化・法的規制の潜脱という問題について、プレ・パッケージ型の倒産手続との関係で理論的検討の蓄積(サブローザプランに関する判例法理)があるアメリカ倒産法を参照することにより、問題点を整理するとともに、私的整理により代替可能な範囲、その理論的根拠、および弊害の回避策について検討を進めることを予定している。 そのため、コロナウィルス感染症の状況次第ではあるが、可能であれば、夏期休業期間または春期休業期間を利用して、米国への出張を行い、資料の収集を行うとともに、米国の研究者や実務家との意見交換を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、日本における合流型の連携構想について軸足を置いて研究を進めるとともに、可能であれば米国に調査出張し、文献収集等を行うことを構想していたが、新型コロナウィルスの影響により、海外出張ができなかったこともあり、米国法に関する資料収集に充てる予定であった支出が想定していたよりも少なくなったことにより、次年度使用額が生じた。 2022年度は、米国倒産法における判例法理の検討を本格的に進めるとともに、米国出張も状況が許せば実施する予定であることから、次年度使用額については主に米国法関係の資料収集のための費用、および、米国出張の費用に充てることを予定している。
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