研究課題/領域番号 |
21K01232
|
研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
的場 朝子 京都女子大学, 法学部, 教授 (20403214)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 国際裁判管轄 / 外国判決の承認・執行 / 不法行為 / 知的財産権 / 人格権 / 不正競争 |
研究実績の概要 |
名誉権などの人格権や知的財産権のような無体物に関する権利が国境を越えて侵害される場合、その「結果発生地」がどこの法域に位置づけられるのかを明確にすることは必ずしも容易ではない。さらに、これらがインターネット上で侵害される場合、その「結果発生地」を領域的に位置づけることは一段と困難になる。しかし、昨今、インターネット上での名誉毀損や知的財産権侵害は頻発しており、こうしたインターネットを通じた不法行為に対する救済を被害者に実効的に付与することは喫緊の課題となっている。 こうした課題は、我が国においてのみならず、海外でも十分に認識されている。実際、「インターネット上での不法行為(サイバー不法行為)」事件との関係で、EUのブリュッセルIbis規則の不法行為地管轄規定がどのように適用されるべきかについて、EU司法裁判所には多くの解釈問題が付託されてきている。 2023年度は、インターネット上での営業誹謗的行為を行った者に対して損害賠償請求および営業誹謗的表現の削除・修正請求がなされた事件につき、国際裁判管轄等に関するEU司法裁判所の先決判断や法務官意見を分析し、インターネット上での名誉毀損事件や知的財産権侵害事件との比較、および、我が国における裁判例の動向との異同等を考察した。 特にインターネット上での不法行為については、被害者の利害関係の中心地に「結果発生」が位置づけられ、その地の裁判所に当該不法行為に基づく請求の国際裁判管轄(不法行為地管轄)が認められると、EU司法裁判所は解してきている。さらに、被害者の住所地が属する法域に被侵害法益の存在が客観的に認められる場合、原則、被害者の住所地に、当該不法行為に関する請求の国際裁判管轄(不法行為地管轄)が認められてよいという考え方もある。こうした考え方の妥当性や射程などについて、今後さらに考察を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特にパンデミックの間、研究の進捗が遅れていました。しかし、2023年度には、海外調査にも出かけやすくなり、海外の研究者と議論をしたり情報を入手したりすることもできるようになった結果、徐々に遅れを取り戻しつつあります。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで、渉外的な「人格権侵害」や「知的財産権侵害」行為の差止めを命じる請求等の国際裁判管轄、及び、そうした外国裁判の承認・執行の問題について考察を行ってきました。今後は、さらに、渉外的な「人権侵害」や「環境損害」行為との関連でも、分析を進めることを予定しています。
|
次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの期間、海外調査に出かけられないなどの理由で研究の進捗に遅れが生じ、当初の予定通りの使用ができなかったことが、次年度使用額が生じた理由です。 論文執筆のために必要なもののうち、まだ入手できていなかった資料等を購入等するために使用させていただく予定です。
|