研究課題/領域番号 |
21K01240
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉村 顕真 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (50610185)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 責任無能力による免責(民法713条) / 故意・過失不法行為 / アメリカ不法行為法 / 過失責任原則 / 暴行(battery) / 突発的疾患 / 通常人・合理人基準 / 主観的基準 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、実際に精神障害者の不法行為責任を肯定しているアメリカ法の判例や論文といった文献を収集した上で、1つ目の課題、すなわち民法713条を削除するとした場合に精神障害者の故意・過失をどのように判断していくのかという問題の分析に取り組んだ。ここまでの研究実績としては次の3点である。 第1に、そもそもなぜ英米法(アメリカ法)では精神障害者の賠償責任が肯定されるのか、その根拠論を分析した。この根拠論に関して、伝統的には多くの理由が挙げられてきたが、本研究では不法行為法の目的に照らしてそれらを3つに整理した上で、その中で特に重要な根拠が何かということを分析した。これを前提にして、第2に、精神障害者の不法行為責任を肯定するにあたって、裁判所が「故意」あるいは「過失」不法行為として実際にどのように判断していくのか、という点を分析した。その分析をするにあたっては、アメリカ不法行為法における故意及び過失概念を整理した上で、精神障害者による故意不法行為と過失不法行為に関するリーディングケースをもとにして分析をした。第3に、裁判所が採用している判断基準に対抗するものとして、とりわけ近年の学説で活発に唱えられている主観的基準論について、神経科学を用いた議論も含めて、その意義や問題点を分析した。なお、現在、これらを踏まえた上で考察を進めているが、まずは5月・6月に研究会で報告をし、年度内に公表していくことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りにおおむね進行している。コロナ禍であるため、資料収集に一定の制約はあったものの、様々なツールを通じてそれを入手したため、ある程度はカバーすることができた。その成果は、研究会報告(5月・6月)をした上で、年度内に公表する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の1つ目の課題に関しては、上述したように5・6月中に研究会報告をした上で、その手直しをして、年度内に公表する予定である。それと同時に、精神障害者の賠償責任に関連する後見人責任(guardianship liability)について分析を進めてしていく予定である。具体的には、そもそも後見人とは誰か、いかなる場合に後見人の責任が認められるのか、さらに病院や介護施設などの責任はどのようになっているのか、という点について分析を進めていく(令和4年度後期から5年度前期を予定)。その分析をするにあたって、まずは日本法における議論状況をまとめた上で、アメリカ法の判例や論文などの資料収集をし、その全体的状況を把握した上で、その分析に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカで資料収集をする予定であったが、コロナ禍のため、それができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。その分は次年度の研究会報告や資料収集に使う予定である。
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