研究課題/領域番号 |
21K01250
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松井 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (50334743)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 契約不適合 / 追完 / 履行に代わる損害賠償 |
研究実績の概要 |
研究期間の初年度は、履行に代わる損害賠償を定めた民法415条2項の成り立ちを確認するため、平成29年民法改正に関する法制審議会の議論をたどり、また先行業績を精査した。その結果、審議過程において、履行に代わる損害賠償請求権と債務者の追完の利益とが考慮されなかったとは言えないものの、追完請求を優先すべきこと(原則として履行に代わる損害賠償請求に先立って追完請求をすべきこと)が明確に意図されたとまでは言えないこと、したがってこの点は解釈問題として残されていることが確認された。 このことを踏まえ、改正民法のもとで現在までのところ展開されている学説としては、①原則として履行に代わる損害賠償請求に先立って追完請求をすべきとの説と、②そのような追完請求を不要とする(直ちに履行に代わる損害賠償請求をしてもよいとする)説とが対立し、③両説のいわば折衷説として、形式的には前者の立場に立ちつつも追完請求を不要とする場面を緩やかに認める説があることが確認されたが、いずれかの説が支配的といえる状況にはないことが確認された。 もっとも、各説の具体的な帰結は明らかでないことも確認された。すなわち、①説によれば、追完請求なく履行に代わる損害賠償が請求された場合に、それが否定されてしまうのか、②によれば、売主から自ら追完することによって損害が軽減できたことが証明された場合に損害賠償額が減額されるのか、③説によれば、どのような場合に追完請求を不要とするのか等々である。 上記と関連するものとして、債務者たる売主の利益に配慮する法的装置として、追完権がある。これに関する邦語の先行業績を渉猟するとともに、平成29年民法改正に関する法制審議会の議論を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のテーマについて、日本の先行業績を概ねフォローし、到達点を確認することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ民法は、2002年の債務法改正において、給付に代わる損害賠償請求権に関する規定を設けたが、その要件として、原則として履行の催告および相当期間の経過を挙げており、本研究が掲げるテーマについて立法的な解決が図られている。今後は、この規定がどのような趣旨で、どのような議論を経てできたのか、どのような機能を果たしているのか等の状況を探り、日本法の解釈にとって参考になり得るかどうかを確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた洋書(ドイツ語書籍)の出版時期が遅延したため、令和3年度内に購入することができなかった。令和4年度にはこれらを購入する予定である。
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