2021年度は、問題点の洗い出しを行うために、スイス連邦国際私法における国際倒産規定の改正経緯を検討する作業を行った。その際には、おもに、立法資料の検討、および改正に際しての比較法的検討の状況を確認した。また、申請者による比較法的考察の対象として、UNCITRALモデル法およびヨーロッパ倒産規則との対比を行った。検討に際しては、ドイツの研究者からのアドバイスとして、ドイツにおける倒産法研究の権威の1人である、レーゲンスブルク大学ペーター・ゴットヴァルト教授から示唆を得た。 本申請にかかる研究に関連する問題を扱う判例が、日本の最高裁によって下されたため、判例研究を行った。最判令和3年5月25日民集75巻6号2935頁は、懲罰的損害賠償を命ずる米国判決について、米国で強制執行がなされ、一部分について弁済がなされたところ、日本で残額の執行が求められた事案である。ここで問題となった問題点の一つが、外国での強制執行によって債務への弁済がなされた場合に、懲罰的損害賠償を命ずる部分への弁済が認められるのかという点である。この判決は、本研究との関係では強制執行(個別執行)の属地性が問題となる。民事執行は国家権力の直接的行使であることから属地性が説かれる。しかし、外国でなされた執行行為を内国で承認しない場合には、二重弁済の危険が生じることから、外国執行行為の承認を認めることを前提としてその要件および効果論を検討する必要がある(別掲業績欄を参照)。この個別執行(民事執行)における属地主義の検討は、包括執行(倒産法)の領域においても共通する問題点を含むものであり、本申請に係る研究と密接な関連性を有する。
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