1)本研究は、スイス国際倒産法の改正を、ヨーロッパ倒産規則、UNCITRALモデル法および日本法と比較・検討することにある。2)国際倒産に関する規律については、UNCITRALモデル法、ヨーロッパ倒産規則そして各国内法が同じ規定を有しているわけではない。しかし、大まかな構造としては、国際倒産管轄、外国倒産手続との調整問題、外国倒産手続の承認、そして倒産国際私法(モデル法は除く)から成る。このうち、倒産国際私法は、重要な問題ではあるものの手続法との関係を重視する本研究では優先性は低くなる。そこで、本研究では、国際倒産管轄、外国倒産手続との調整問題、外国倒産手続の承認という部分に重点を置き、改正スイス国際法典における規律をUNCITRALモデル法、ヨーロッパ倒産規則そして日本法との比較検討することにした。3)3年間の研究期間のうち、初年度は、現行のスイス連邦国際私法点における国際倒産規定の制定経過および規定の問題点についての整理に、第2年度は、国際倒産管轄および外国倒産手続との調整問題に充て、そして最終年度は、外国倒産手続の承認問題と研究の総括に充てた。4)スイス国際倒産法については国内文献は極めて少ない。そこで、外国の研究者とのネットワークを通じた情報の収集が重要になる。この点について、申請者は、チューリッヒ大学ハース教授、レーゲンスブルク大学ゴットヴァルト教授、ミュンヘン大学ハウ教授、ベルリン・フンボルト大学パウルス教授との交流を通じて情報や文献の収集、さらに各種のアドバイスを得た。また、2023年4月にスイス・ベルンで開催された国際訴訟法学会に参加し、ベルン大学マルクス教授、同大学アイヒェル教授とのコンタクトを得て、研究に関する疑問を直接解消する機会を得た。5)研究成果を、所属する研究機関の紀要、ドイツの専門誌に掲載する予定である。
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