研究課題/領域番号 |
21K01256
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
野澤 紀雅 中央大学, 日本比較法研究所, 客員研究員 (60133899)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共同監護 / 共同養育 / 子の扶養 / 養育費 / ドイツ法 / スイス法 |
研究実績の概要 |
2022年度も、主としてドイツの状況を研究した。 新たな社会学的資料として、「ドイツにおける家族モデル(FAMOD)」の第2報告が公表された。昨年検討した第1報告では、監護モデルと子の福祉の相関関係が分析の対象であったが、今回の第2報告では、これと密接に関連する親の福祉が分析対象とされている。一方の親の下での監護が30%未満の「引取りモデル」よりも、それが30%以上の「交替モデル」における方が子どもと家族の福祉に資するが、その程度は、交替モデルの内部では両親の監護割合がほぼ半分の「対称的交替モデル」に至らない「非対称的交替モデル」の方がより高いということが確認できる。 最近の学説では、この非対称的交替モデルを念頭に置いた扶養料算定方法を論じるものが多い。判例は、この形態の共同監護のケースでも、引取りモデルと同じく民法1606条3項2文の適用があり、監護割合の少ない親が単独の扶養義務者となり、その者の所得のみによって子の扶養需要が算定されるが、裁判所の裁量により、監護負担を考慮して算定表での所得グループを格下げにより扶養料の軽減が可能であるとしている。最近の学説は、この領域における算定方法の合理化を試みていると言える。具体的には、まず両親双方の合算所得にしたがって子の扶養需要を査定し、両親各自の所得割合と監護分担割合を組み入れた計算により、各自の扶養料分担額を決定している。民法1606条3項1文による所得按分責任の原則と、同2文による監護の扶養評価(世話扶養)との組合せである。こうした試みは今後の裁判実務にも影響を与えるものと考えられる。 また、判例の新たな展開としては、監護親が子に与えている現物給付が扶養義務の履行として評価されることにより、監護親を権利者とする離婚後扶養における要扶養性や、監護親を義務者とする親扶養における扶養能力にも影響を及ぼすことが指摘されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.「研究実績の概要」に述べたように、ドイツにおける社会学的研究の進展、判例・学説の新たな展開により検討すべき問題が増加し、これに対応したことが主たる理由である。また、新判例に対応した扶養料算定表(デュッセルドルフ表)の改定や、急速なインフレーションの進行を受けた児童手当の改定など付随的事項の検討にも時間を要した。なお、ドイツの現状に関する論考の前半部分は執筆を終えている。 2. 2022年度中にドイツの研究者を訪問して意見交換の機会を持つことを予定していたが、渡航制限解除の遅れや、それに伴うスケジュール調整の困難により実現できなかった。 3.スイス法に関しては、スイス家族法の体系書の改訂版(2022年10月刊行)による、改正法実務の概略的理解にとどまっている。また、多くの知見が期待できる浩瀚な実務用ハンドブックの刊行も2023年6月に延期されている。
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今後の研究の推進方策 |
1.ドイツ法の状況に関する論考をまとめる。 2. 4年ぶりに開催される、「ドイツ家庭裁判所大会(Deutscher Familiengerichtstag)」(2023年9月21日―23日)に参加し、関連分科会に出席して最新の問題状況を調査する。その前後に専門の研究者を訪問して聞取りを行う(マールブルク、ゲッチンゲン、ヒルデスハイム各大学を予定)。 3. スイス法の研究を本格化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外出張(ドイツ)が、新型コロナウィルスによる渡航制限の解除が遅れたこと、およびそれに伴う相手方との連絡調整の困難により、延期された。
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