研究課題/領域番号 |
21K01259
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鎌野 邦樹 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (00204610)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | マンション / 区分所有 / マンション法 / 区分所有法 / 比較法研究 / 区分所有法制の比較 / マンション法制の比較 / マンション管理・再生の実態 |
研究実績の概要 |
本研究は、マンション区分所有法制について、わが国の法制上の問題や紛争の実態および諸外国の立法例やその運用・実態についての調査を基礎にして、第1に《区分所有者が、適正かつ円滑に持続可能な形で建物等を共同で管理するためにはどのような制度が必要か(さらにどのような制度を新たに創設する必要があるか)》という「問い」を発し、第2に、第1の「問い」と連関するものとして、建物の物理的・社会的寿命を前提に、《区分所有建物を適正かつ円滑に「更新」ないし「終了」(両者を合わせて「再生」という。)させるためにはどのような制度が必要か(さらにどのような制度を新たに創設する必要があるか)》という「問い」を発し、それらを解明し、これら2つの「問い」について、個別具体的に、また、総合的に、解答を提示しようとするものである。 上記2つの「問い」に答えるために、本年度は、主として、以下の①および②の調査研究等を実施した。 ①上記の2つの「問い」に関連し、政府において、2022年10月より法務省法制審議会(区分所有法部会)がほぼ月1回のペ-スで、また、国土交通省の「今後のマンションの在り方に関する検討会」が、ほぼ同様のペ-スで開催された。私は、両者の審議会・検討会(その主要な審議・検討内容は、適正な管理、適正な再生、および被災区分所有建物の復興である。)の委員であることから、それらに参加し、本研究を通じて得られた成果を踏まえて、学術的見地から積極的に発言し、また、いくつかの提言を行った。 ②2023年8月30日~9月12日に、フランスおよびドイツにおいて主として管理の実態についてのヒアリング調査を、国内外の研究者の協力を得て実施した。調査先は、フランスでは、管理者(パリ)、不動産管理会社(ナント)、研究機関、ドイツでは、管理会社、区分所有者団体、2020年住居所有権法改正における連邦法務省立法担当者であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】に記載した①については、概ね順調に進展したが、②に関し、海外調査の成果の検討については、国内外の研究者(韓国の研究者を含む。)による検討会をオンラインにて2回実施し議論をし(10名程度出席)、また、その調査結果について、国内研究協力者である寺尾仁(新潟大学フェロ-)・吉井啓子(明治大学教授)がフランスの調査をマンション管理通信2024年1月号に、藤巻梓(国士舘大学教授)がドイツの調査を同誌2024年2月号に発表したが、必ずしも学術的見地から、両国の立法と関連させた分析については十分にはなされていない。したがって、この点の分析等を行うため、本研究の期間を1年間延長する旨の申請を行った。なお、本研究代表者(鎌野邦樹)は、2024年度~2027年度において、「改正マンション・区分所有法制の各制度の評価と課題-比較法研究の成果を踏まえて-」を実施するが、ただ、本研究(2021年度~2023年度(2024年度まで延長))と「2024年度以降の研究」とは密接に関連するため、両研究を併存して行うことは、きわめて有益であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】に記載したように、②に関し、海外調査の成果の検討については、必ずしも学術的見地から、両国の立法とも関連させた分析が十分にはなされていないことから、この点の分析等を行うため、本研究の期間を1年間延長する旨の申請を行い、2024年度~2027年度の研究代表者(鎌野邦樹)の研究課題である「改正マンション・区分所有法制の各制度の評価と課題-比較法研究の成果を踏まえて-」と併存させて、本研究を推進する。わが国のマンション・区分所有法制を評価するにあたって、わが国の区分所有法(昭和37年法律第69号)の制定にあたり、最も参考にした法制は、フランスとドイツの法制であると思われるところ、両国の立法における制定時から現在に至るまでの改正の状況および両国における現在の課題を解明することはきわめて有益であると考える。なお、研究代表者は、本研究との関連で、2024年3月28日に、自民党所属の国会議員20名程度により構成される「マンション議員連盟」からの招聘を受けて、議員会館において、「外国のマンション法制」に関する講演を行った。このことは、今後のマンション・区分所有法制についての国会における審議(法務委員会等)に影響を与える可能性がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】に記載したように、同記載②に関し、海外調査の成果の検討については、必ずしも学術的見地から、両国の立法とも関連させた分析が十分にはなされていないことから、この点の分析等を行うため、本研究の期間を1年間延長する。なお、2024年度~2027年度の研究代表者(鎌野邦樹)の研究課題である「改正マンション・区分所有法制の各制度の評価と課題-比較法研究の成果を踏まえて-」と併行させて本研究を推進する。前記載のとおり、わが国のマンション・区分所有法制を評価するにあたって、わが国の区分所有法(昭和37年法律第69号)の制定にあたり、最も参考にした法制は、フランスとドイツの法制であると思われるところ、両国の立法における制定時から現在に至るまでの改正の状況および両国における現在の課題を解明することはきわめて有益であると考える。 次年度の使用計画については、フランスとドイツに関する外国文献資料および日本の区分所有法制に関連する文献資料の購入、並びにこれらに関する研究会の開催に伴う国内研究者の旅費に充てることを予定している。
|