研究課題/領域番号 |
21K01269
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
カライスコス アントニオス 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60453982)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不公正な取引方法の規制 / ステルス・マーケティング / EU消費者法 / 広告規制 / 消費者教育 / 持続可能性と消費者法 / デジタル・プラットフォーム取引 / デジタル化と消費者法 |
研究実績の概要 |
本年度も、昨年度および一昨年度からの作業の継続として、サーキュラー・エコノミーが台頭する中で消費者法がどのような影響を受け、あるいは、サーキュラー・エコノミーの確立のためにどのように機能できるのかに関する国内外の文献その他の資料等を調査し、論点や関連する議論の整理を行った。その際、比較法的な考察の中核としてはEU法との比較を行ったが、EU法では、不公正取引方法指令が担う役割が大きいことから、この指令に関する分析を継続しつつ、デジタル・サービス法やデジタル市場法等の新たな立法等が及ぶ影響についても研究対象とした。 より具体的な研究対象としては、まず、ステルス・マーケティングを取り上げた。ステルス・マーケティングは、消費者に誤認を生じさせてその消費行動を歪める可能性の高い手法であるが、その影響は、持続可能な消費の実現、ひいては、サーキュラー・エコノミーにも及ぶ。EUや米国等におけるステルス・マーケティングの規制について、論文や報告等を通じて一定程度の成果を公表した。 次に、サーキュラー・エコノミーは、取引のデジタル化と密接に関連するが、そのようなデジタル化の中で消費者法がどのように変容し、どのような消費者法の在り方が望ましいのかについて、比較法的な視点からの論文を執筆し、報告を行った。 加えて、デジタル化社会の中では、個人データが、いわば「燃料」としての位置づけを有することが指摘されているが、消費者取引における個人データの対価的位置づけやその規制は、サーキュラー・エコノミーにおいて中心的な課題となる。これについても研究し、報告を行った。 他にも、広告規制、消費者行政、消費者教育、オンライン・プラットフォーム規制等、様々な角度から本研究対象についての分析を進めて業績を公表したほか、関連する領域における日本法の在り方や今後の展望について英語での論文公表や報告を行い、海外への発信にも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように、本研究課題に関する分析を継続し、その成果を日本語や英語で国内外に発信することができている。検討対象も、総論的なものから各論的なものまで多岐にわたり、多角的な考察を進めることができている。これらの理由から、本研究課題はおおむね順調に進展している考えている。 本研究の成果として公表している業績のほか、まだ文字化あるいは報告の対象としていないものも多く、これらについては、今後、順次に公表していくほか、書籍という形でまとめることを予定している。そのような公表や出版に向けて、今後は、本研究の内容をさらに充実させるために、総論的な課題と各論的な課題のいずれについても、分析を継続する予定である。特に書籍については、これまでのより周辺的な考察とは異なり、サーキュラー・エコノミーにおける消費者法の在り方について、さらに掘り下げて正面からとらえて論じることを計画している。 昨年度と同様に、本年度も、国内外での資料収集や研究者との意見交換・情報交換を行ったほか、国内外のネットワークを拡大させ、そこから得られた情報等を本研究に役立てることができた。いまだに続くコロナの影響を受けて、海外での資料収集や意見交換・情報交換を必ずしも当初の予定通りに行うことができなかった部分がある。しかし、昨年度と同じように、オンラインでの資料収集や意見交換・情報交換のためのネットワークを構築することができ、これからもこれを活用して比較法的考察に係る作業を行う予定である。 以上の理由から、研究業績の公表、研究作業の実施、今後の研究の継続の予定のいずれの面からも、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず、これまでと同じように、国内外の文献等の資料の収集と調査、そして研究者との意見交換や情報交換を行う予定である。 より具体的には、前述したように、サーキュラー・エコノミーにおける消費者法の在り方についてより正面から捉えて論じる予定であることから、関連する書籍等を購入したり、国内外で資料収集をして分析することを計画している。また、研究の方向性や整理について客観的に確認することができるよう、引き続き、国内外の研究会等で報告をし、意見交換等を積極的に行って、必要に応じて軌道修正等を行う。現在はコロナの影響も弱まっていることから、本研究について計画してきた海外での資料収集や意見交換も、対面とオンラインを適宜活用しながら実現していきたい。さらに、本研究は消費者保護のみならず、消費者教育や消費者市民社会の在り方にも密接に関係するものであることから、これらに関する研究や、関連する委員会等での活動を通じた実務的な視点を取り入れながら研究を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により、当初計画していた海外での資料収取や学会への参加等、さらには、国内の研究会への現地参加等を計画通りに行うことができなかった。現在では、コロナの影響も弱まり関連する制約も緩和されていることから、最終年度において全額の執行ができる見込みである。
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