昨年度は、引き続き、循環型経済の実現に向けた持続可能な社会の形成において消費者法が果たしている役割について、包括的な視点と個別の視点から分析した。包括的な視点としては、EU法(特に消費者法)における近時の展開が非常に示唆に富む。EUにおけるこのような動きとこれが日本法に与える示唆について論文を執筆し、研究会等で報告を行った。 個別の視点として、特にステルス・マーケティングに注目した。広告であることを明示しないマーケティング活動は、不要な消費を促すなどして持続可能性の実現を阻害する側面もあるが、日本における新たな規制の特徴と、EUと比較した場合のその課題や問題点について、分析した上で、論文の公表や講演会・発表を行った。なお、持続可能性の実現について検討する際、日本法における消費者市民社会や消費者教育の位置づけが、世界的にひとつのモデルとして機能しうることについて、海外での講演や報告で考察し、発信した。 他の個別の視点からの分析として、デジタル取引における個人データの在り方について検討した。従来、個人データの保護は主にプライバシーの観点を中心とするものであった。しかし、デジタル取引では、個人データは対価的な位置づけを有し、また、事業者の行う取引方法において活用され、循環型経済の実現における重要な要素となっている。これらのことについて論文や発表で取り扱った。 さらに、オンライン・プラットフォームは、循環型経済を展開する際の主な媒体のひとつとなるが、その役割や責任について分析して論文や発表で成果を公表するとともに、日本における体系について論文や発表を通じて海外に向けても発信した。 上記以外にも、広告規制に関する研究や、循環型経済実現の基盤となる不公正取引方法の規制全般についても成果を公表した。上記の成果は、すべて、研究機関全体を通じて一環して継続したものである。
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