研究課題/領域番号 |
21K01270
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船越 資晶 京都大学, 法学研究科, 教授 (70362548)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 批判法学 / ポストモダニズム / 法曹論 / 司法政治学 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の研究を実施した。 第1に、現代的な法曹像を構想するための基礎的作業の一環として、アメリカ法社会学(新制度論)において蓄積されてきた弁護士役割論、とりわけ弁護士を「当事者対抗的リーガリズム」を推進する勢力と位置づけるロバート・ケイガンの所説について再検討を行った。 第2に、現代的な法曹像の構想を理論的に正当化するための基礎的作業の一環として、ポストモダンな裁判過程像を提示する「裁判理論の闘技民主主義」について、国際的ワークショップにおける報告を行った。 第3に、現代裁判は富の分配とアイデンティティの承認が争われる政策論争のフォーラムであるとする本研究の基本構想に対して、一般的妥当性を有する理論的基盤を提供すべく、法類型論の古典たるフィリップ・セルズニックとフィリップ・ノネの『法と社会の変動理論』を、「法の支配」の変容を説く普遍史的な物語として再解釈し、その成果を論文「法の支配3.0―法類型論再訪」にまとめた(『法と社会研究』8号掲載予定)。その意義は以下のとおり。セルズニックらの提示した自律的法・応答的法を、それぞれ近代的な「法の支配1.0」・「法の支配2.0」と解釈したうえで、批判法学と新制度論の成果を参照することにより、両者の次に来る現代的な「法の支配3.0」の構想を提示した。そこにおいて「法の支配」は、真理や正義ではなく、差異や制御を中心とする語彙によって再記述される。そのような「法の支配」のあり方は、現代法学の最前線に姿を現しつつある、多元的で開放的な法システムのあり方に対応している。以上の成果は、法的思考論、裁判理論および正義論を21世紀仕様で総合して、本研究が定礎を目指す司法政治学のあり方を示すものになっていると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、現代的な法曹像の構想とその理論的正当化に向けて、本年度は以下の成果を挙げることができた。 第1に、アメリカ法社会学において蓄積されてきた弁護士役割論について再検討を行うことにより、本研究の記述面での一般的妥当性を高めることができた。 第2に、ポストモダンな裁判過程像を提示する「裁判理論の闘技民主主義」について、国際的ワークショップにおける報告を行うことにより、本研究の理論面での一般的妥当性を高めることができた。 第3に、フィリップ・セルズニックとフィリップ・ノネの『法と社会の変動理論』を、「法の支配」の変容を説く普遍史的な物語として再解釈することにより、現代的な「法の支配」の構想を提示するとともに、法的思考論、裁判理論および正義論を21世紀仕様で総合した、本研究が定礎を目指す司法政治学のあり方を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である、現代的な法曹像の構想とその理論的正当化に向けて、本年度は、昨年度に引き続き先行研究の再検討を中心とする基礎的作業を実施するとともに、本研究全体の理論的基盤となる成果(「法の支配3.0」)を前倒しして公表することができたので、次年度以降は、現代法曹論の具体的内容について、順次研究成果を公表することを目指したい。
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