本研究により、①損害賠償責任が事実上の無過失(厳格)責任として運用されている現在の知財法のあり方は、侵害の適切な抑止の観点からは維持されるべきでないこと、②悪質な海賊版等の横行が社会問題化している現在、故意による知財権侵害と単なる過失によるそれとは質的に区別され、両者の効果に段階的な差異を設けるべきであること、③故意侵害については、損害の填補賠償を越えた金銭的救済によって侵害の抑止を図るために、知財法が政策立法であることに鑑み一般民事法にない侵害者利益の吐き出し、追加的な賠償の途が拓かれるべきであることが明らかにされた。これらはいずれも、今後の立法・解釈論に影響を及ぼしうるものである。
|