研究課題/領域番号 |
21K01275
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
平野 美紀 香川大学, 法学部, 教授 (70432771)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 再犯防止 / 社会復帰 / 入口支援 / 医療観察法 / 社会内処遇 / 精神障害 |
研究実績の概要 |
誰一人取り残さない共生社会、誰にとっても安心安全な社会の構築に向け、障害を有する者が違法行為後においても、社会の中で受け入れられる、再犯防止に資する社会内処遇制度のあり方について検討してきた。研究の柱となる方向性としては、次の3点である。①障害を有する者に関する刑事司法の入り口の問題の検討、②触法精神障害者の施設処遇の長期化して、社会復帰が円滑に進まない問題の検討、③刑事司法の中で、いわゆる矯正処遇における精神障害等の処遇の問題の検討、である。 そこで、①について、「入口支援」の現状に関し、特に四国内を中心に検討し、四国の特徴と比較するため、他の地域との比較を行い問題点を検討した。入口支援とは、違法行為を行った、障害等配慮を要する者に対して、刑事司法の入口段階で支援し、刑事司法の枠組みに入れることなく社会内での生活を維持できるようにするものである。さらに、②については、触法精神障害者の処遇を定める医療観察法において、入院が長期化して社会復帰が阻害される要因について、実務家から聞き取り調査を行い、スムーズな社会復帰のために必要な支援を検討し、また、措置入院退院後の社会復帰について、自治体等における試みについて検討した。③2022年に刑法が改正されて、刑務所での処遇に改善更生の視点が重視されるほか、知的障害者の処遇についての問題、について検討した。 さらに社会内処遇の先進的な試みを行うことで知られるオランダでも、刑事司法の枠内での、精神障害者の処遇について調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①障害を有する者に関する刑事司法の入り口の問題、②触法精神障害者の施設処遇の長期化して、社会復帰が円滑に進まない問題、③刑事司法の中で、いわゆる矯正処遇における精神障害等の処遇の問題、について、それぞれ進めてきた。①違法行為を行った、障害等配慮を要する者の「入口支援」について、四国内と沖縄県、長崎県での調査を行い、各地域でそれぞれその地域の特性を生かしながら、地域内の連携を進める必要性について検討した。②と③については、研究会での報告や、学会でワークショップを開催して、触法精神障害者の処遇を定める医療観察法において、入院が長期化して社会復帰が阻害される要因や、医療刑務所での現状について検討した。加えて①と③について、社会内処遇において先進的な試みを行っているオランダでの調査を行い、裁判の実情や社会内処遇の現状について調査を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
①障害を有する者に関する刑事司法の入り口の問題、②触法精神障害者の施設処遇の長期化して、社会復帰が円滑に進まない問題、③刑事司法の中で、いわゆる矯正処遇における精神障害等の処遇の問題、について、それぞれ、①引き続き四国内の入り口支援の現状と他の地域と比較して問題を検討する。特に2023年3月に第2次再犯防止推進計画が策定されたため、これまでの再犯防止推進計画との進捗状況との関係を中心に検討をする。②触法精神障害者の施設処遇の長期化して、社会復帰が円滑に進まない問題については、新たに医療観察法病棟を設置した北海道での調査のほか、入院と退院後の状況について、検討を進める。③については、昨年度に引き続き、オランダを訪問し、保護観察制度のほか、刑罰としての社会内処遇、また、刑事司法の枠組みの中で処遇するTBS処分での専門施設での処遇と社会復帰の問題について検討を進める。そして、我が国の刑法改正に伴う改善指導の在り方や、社会復帰への円滑なソフトランディング、そして社会内処遇について、検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、予定していた調査がすべて実施できたわけではないため。
|