誰一人取り残さない共生社会、誰にとっても安心安全な社会の構築に向け、障害を有する者が違法行為後においても、受け入れられる社会の構築のため、精神障害を有する者の再犯防止に資する社会内処遇制度のあり方について検討することを目的とした。 ①刑務所には一定数精神障害を有する者が存在し、障害が再犯の原因にもなる。そして拘禁刑の導入にあたり、処遇での改善更生や再犯防止の視点が強まるであろう。そこで処遇の内容や出口支援と出所後の医療等支援継続についての現状と課題の把握のため、四国九州にある、刑務所、特別調整を担う保護観察所、地域生活定着支援センターを訪問し検討を行った。出所後の生活拠点の地域特性があり課題は多岐にわたるが、多職種での処遇の検討と職員の人権意識への教育が、大きな課題として指摘できる。 ②刑務所入所以前の入口支援について、関係機関の連携の状況についての検討を行った。起訴前に弁護士や検察官がそれぞれの立場で、犯罪行為の背景や本人の特性を踏まえて処遇に反映すること、その過程での情報共有の課題が浮かび上がった。 ③医療観察法でも同様に最終的には地域社会での医療の継続と支援が課題となるため、指定入院医療機関での処遇、出口支援、退院後の医療の継続の現状と課題について検討した。精神保健福祉法上の措置入院退院後の社会復帰も同様に、自治体を含めた多職種での継続的な情報共有と支援が大きな課題である。 ④比較対象として、司法精神医学の発展しているオランダの法制度も検討した。同国では、2020年に触法精神障害者に対する法律を改正し、医療等に協力的ではない被疑者に対して多職種での検討や、被疑者の身柄拘束の段階から保護観察官の関与で、本人の背景や処遇に対しての情報が刑事司法機関内で共有される。また、社会内処遇での社会奉仕命令とよばれる刑罰を有しており、共生社会に向けた制度について、非常に参考になろう。
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