研究課題
2021年度は、コロナ禍のため国内外の出張に制約があり、現地調査を要する研究は中断を余儀なくされた。その一方で、適格消費者団体が母体となる特定適格消費者団体の被害回復関係業務について、いわゆる消費者裁判手続特例法の見直しが進み、年度末には改正法案が作成された。その過程において、適格消費者団体全体をも含めた公的な支援のスキームが議論の俎上に登り、法案でも具体化が図られている。こうした状況変化の中で、本研究の適格消費者団体の訴権行使に関する基本的な制度論や実務運用についても再検討を要する部分があり、研究に協力していただく研究者および実務家との意見交換を、遠隔会議システムにより行った。また、適格消費者団体の差止請求権の訴訟外または訴訟上の行使について、事例集積と分析を行う作業も2021年度に着手した。適格消費者団体の数も22団体となり、訴訟提起の件数はそれほど多くないとはいえ、訴訟外の申入れに基づく差止請求権の実現事例は膨大な数に上る。消費者庁が法に基づいて公表している事例は全体の一部に過ぎないので、各団体の公表資料に基づいて調査を行い、場合によっては協力を得られる団体に直接インタビュー等をする必要がある。こうしたことから、事例収集自体も同年度中は未完了であった。他方、フランスの対応する制度であるグループ訴権の実情と改正動向を調査し、これと日本法との比較検討を行う作業については一応の目処が付き、残るはフランスの消費者団体との意見交換を実施するだけとなっている。意見交換の結果や事例集積と分析の結果を中間的に取りまとめて、あらためて各地の適格消費者団体の協力を依頼して、より詳細な事実関係の調査分析を次年度の課題としている。
3: やや遅れている
関係する法律の改正作業が予想以上に進行し、そのフォローが必要であったこと、またコロナ禍のため国内外の出張が事実上困難となり、事実調査を公表資料に基づいて行うにとどまったため、補充が必要なものにとどまっていることによる。
適格消費者団体の財政や組織面での基盤についての調査を、法改正の影響も踏まえながら取りまとめるとともに、現在進行中の事例調査を着実に実施する。またコロナ禍の状況が許せば、国内各地とフランスの消費者団体に出張しての調査を実施し、公表資料に基づく調査結果のさらなる充実を図る。
2021年度の支出予定であった旅費やその他の経費がほとんどコロナ禍の影響で支出できなかった。次年度はやり残した出張を伴う調査とその際の専門知識の提供、情報提供等の人件費支出を行う。
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NBL
巻: 1209 ページ: 113-118