研究課題/領域番号 |
21K01282
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
牛嶋 仁 中央大学, 法学部, 教授 (50268968)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 気候変動 / 気候訴訟 / パリ協定 / 法の支配 / 司法審査 / 人権 / 市民 / 自治体 |
研究実績の概要 |
2023年度は、日本の気候変動訴訟について、他の研究者との共同作業により検討を進め、その成果のオンライン公表を英文により共同で行った。諸外国の研究者からは、日本の状況について問い合わせを受けることが多々あり、成果公表によって日本の気候変動訴訟における現状と課題について情報提供できたことは、グローバルな研究ネットワークにとって大きな意義があると考えている。 さらに、欧州と韓国の気候変動訴訟について、それぞれゲスト招聘(2023年12月)と現地調査(2024年2月)を実施し、調査検討を行った。 上記調査を含む調査研究により、明らかになったことは、以下のとおりである。 1)各国国内裁判所・国際裁判所において、気候変動訴訟とその判例法理が急速に発展していること、2)気候変動訴訟で問題となっている法的争点や利用されている法的準則は、伝統的なものであること、3)しかしながら、気候変動訴訟に関する各判決間の相互影響等により、特に欧州では、創造的な判例が続出していること(そうでないものも多いことに注意すべきであるが、その拡がりは、グローバルサウスにも及んでいる)、4)気候変動対策(緩和・適応・公正な移行)のような新たな社会課題に対して、人権保障や権利保障等の観点から議会・行政を統制する裁判所の担う役割が各国・国際社会において問われていること、5)日本においては、裁判所を支える社会的基盤(社会の発展のため、社会における裁判所の役割を広く理解する制度や考え)が強いわけではなく、伝統的な判例法理の変化する兆しがないこと、6)事業者や市民団体においては、気候変動訴訟や気候変動対策の大きな動き・流れについて、その対応が急速に進捗していること、などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本法に関する研究成果の英文による公表や海外における研究成果公表(中間報告・口頭)は、順調に進捗しているが、海外調査及び調査研究結果の論文公表について課題がある。この点については、2024年度に進捗を図りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの研究成果は、国際法曹協会人権会議(IBA Human Rights Conference)での口頭報告(2024年4月)や日本の環境法政策学会分科会(2024年6月)において報告済または報告予定である。その他、海外調査及び研究成果の論文公表について進捗を図りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施地の変更(勤務先大学及び研究室の都心移転)が実施され、その対応を行ったため、予定していた海外調査等を実施する時間的余裕が少なくなり、次年度使用額が生じた。 2024年度には、海外調査を予定しており、次年度使用額は、これに使用する予定である。
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