研究課題/領域番号 |
21K01287
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
王 冷然 南山大学, 法学部, 教授 (70546639)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 専門家責任 / AIの活用 / 金融サービス / 医療契約 / 役務提供 |
研究実績の概要 |
本研究では、AIを活用している医療と金融サービスの分野に着眼し、第一の目的として、AIの利用は患者や顧客の意思決定や債務内容の形成にいかなる変化をもたらすかを整理・分析する。また、第二の目的は、「専門家責任」の視点から、AIの利用によって従来の理論が対応できない点を解明するとともに、具体的な解釈提言を行う。そして、最終的には、AIの活用が進む社会において、専門家たる役務提供者の責任認定を再構築し、専門家責任に関する立法提言を行う。 今年度は新型コロナウィルス感染状況の影響により、実態調査を行うことができなかったが、文献などを調べて、AIの利用に関する金融サービスの状況を確認する作業を行った。 日本の金融機関はロドアドバイザーというサービスを提供しているが、それに関する規制や法的ルールが存在せず、従来の金融取引に適用する適合性原則や説明義務などのルールがどのように適用するかといった問題が生じている。また、金融庁の調整によって、日本の高齢者退職世代は過去20年間の金融資産が伸びておらず、直近では退職世代等の保有する世帯あたりの金融資産は米国の半分以下しかない。しかし、2025年には、有価証券保有者のうち、70歳以上の割合が50%となり、他方65歳以上の認知症患者の割合が最大3人1人となる。このような状況を考えると、金融サービスには多様化への対応が必要となり、AIを活用して金融サービスの提供が重要な課題となる。 金融領域でのAI活用について、現有の法律では対応できないところがあり、諸外国の経験を参考にし、新しいルールを作る必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染状況の影響により、当初予定されていたAI活用の実態調査を実施することができなかったため、日本におけるAIの実際の利用状況を把握することでできず、潜在的な法的問題に関する分析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度からはAI活用の実態調査を行い、日本におけるAIの利用状況を精査したうえ、存在する問題を整理するとともに、AIの利用により生じた問題に関するアメリカやヨーロッパなど諸国の議論状況を精査し、法体系の異同に注意しながら、現有の法規定や法理論の限界を分析し、AIの影響に対応する法的解釈を行うように研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外出張が実施できず、旅費を使用しなかったため、446,655円の次年度使用額が生じた。
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