研究課題/領域番号 |
21K01288
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高嶌 英弘 京都産業大学, 法学部, 教授 (70216646)
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研究分担者 |
中田 邦博 龍谷大学, 法学部, 教授 (00222414)
草鹿 晋一 京都産業大学, 法学部, 教授 (30327118)
坂東 俊矢 京都産業大学, 法学部, 教授 (40189733)
河上 正二 青山学院大学, 法務研究科, 客員教授 (70152923)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 消費者法教育 / 消費者教育 / 消費者法 / 消費者市民社会 / 成年年齢引き下げ / 消費者教育推進法 / 消費者教育の推進に関する法律 |
研究実績の概要 |
2021年度には、代表研究者及び共同研究者4名によって「消費者法教育研究会」を組織し、研究会を4回にわたって開催した。本研究会には、消費者保護活動の専門家である野々山宏弁護士(元国民生活センター理事長、現京都消費者契約ネットワーク理事長)、消費者法研究者の牧野高志准教授(平成国際大学)、消費者行政のパイオニアである荒木武文氏(神戸市職員)をはじめとして、消費者教育の専門家や消費生活相談員等がメンバーとなり、多角的な検討が行われた。各回のテーマと開催日は以下の通りである。第1回:「成年年齢引き下げに対する教育現場での対応準備に関するアンケート調査の実施について」(2021年7月21日)、第2回:「高校における消費者教育の現状と課題」(同年10月5日)、第3回:「美容医療及びエステサービスの特性と若年層の契約被害」(同年10月24日、消費者ネット関西と共同開催)、第4回:「第1部 消費者教育フェスタ見逃し配信-埼玉県の不当表示広告調査について-」、「第2部 不当表示広告調査を振り返って-担当者のトークセッション-」(2022年2月11日)。なお、新型コロナウイルス感染症のため、全ての研究会はzoomを利用してオンライン形式で行われた。とりわけ第4回研究会はオンラインシンポジウム形式で行われ、150名がこれに参加した。 自治体との協力については、2021年6月5日に、大津市と協同して市民向けシンポジウム「成年年齢引き下げ直前討論『成年になるとは』」を実施し、高嶌がコーディネーター、中田、坂東がパネリストとしてこれに参加した。このシンポジウムの成果は、雑誌「消費者法研究11号にて公表された。 また、同年11月13日には、高嶌、坂東、河上の3名が消費者法学会にて報告を行い、中田がシンポジウムの司会を務めた。その成果は、2022年度中に学会誌等でも公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、消費者市民社会の実現という観点から、わが国における若年層に対する消費者法教育の基本理念と体系の明確化を図ること、及び、今後の高校及び大学における消費者法教育の内容と教育メソッドを明らかにする点にある。この目的を達成するため、2021年度は、4回にわたる研究会とシンポジウムや学会における報告によって、わが国の高等教育、とりわけ高校及び大学において、従来、どのような理念と枠組みに基づいてどのような内容の消費者法教育が行われてきたのか、そして今後の課題がどこにあるのかを明らかにすることができた。とりわけ高校教育の現場においては、すでに消費者法に焦点を当てた先進的な消費者法教育の試みが実施されていること、自治体や消費生活相談員と連携してその成果が共有されていることを確認できた。あわせて、高校における消費者法教育の実施には時間的制約があること、消費者法教育の担い手である高校教員に対する広範囲のサポートが必要であること、等の問題点も明らかにできた。 あわせて、2021年度には、地方自治体や多くの消費者団体と連携し、各種のシンポジウムや学会を開催することができた。これらの開催を通して研究成果を随時社会に還元するとともに、消費者法教育に携わる教員や消費生活相談員、NPO団体職員等の現場の声を聞き、今後の研究内容に反映させることができた。上記の各研究活動の成果は、すでに雑誌等で公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては、同年4月1日から実施されている成年年齢の引き下げにより、高校教育や消費生活相談の現場にどのような影響が生じており、これに対してどのような消費者法教育が求められているのかを検討する。この点の調査については、すでにNPO団体「コンシューマーズ京都」と連携して、同年5月29日に、一般市民にも開かれたシンポジウムを実施予定である。本シンポジウムには、消費者法の研究者のみならず、NPO団体関係者、消費生活相談員、自治体職員、大学生とその保護者など、若年層に対する消費者法教育の関係者がパネリストとして参加し、現場における状況と今後の課題を検討する予定である。あわせて、自治体と連携した取り組みとして、大津市と本研究会が協力し、大学における消費者法教育の在り方を検討するシンポジウムを計画中であり、同年秋に実施予定である。 次に、本研究の目的の1つに、「近時のイギリス、アメリカ、EUにおいて、若年層の消費者法教育がどのような理念とどのような制度枠組みで実施されているかを明らかにする。」との点があり、2022年度には、これに対応した海外調査が予定されている。当該調査の実施に向けた準備については、現在のところ、新型コロナウイルス感染症の影響により、EU及びイギリスの現地調査が困難な場合を想定して、台湾の消費者団体と連携し、台湾の現地調査を行うことも検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画においては、各研究会は対面開催を前提として予算を組んでいたところ、研究会やシンポジウム、学会の全てがオンライン開催となったため、予定していた交通費や宿泊費を支出する必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。今後、新型コロナウイルス感染症の状況を考慮しつつ、研究会の対面開催及び海外調査を実施する予定である。
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