研究課題/領域番号 |
21K01289
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研究機関 | 名古屋短期大学 |
研究代表者 |
綾部 六郎 名古屋短期大学, 現代教養学科, 助教 (60609543)
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研究分担者 |
池田 弘乃 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (80637570)
小林 史明 明治大学, 法学部, 専任講師 (70778571)
佐藤 美和 お茶の水女子大学, 生活科学部, 学部教育研究協力員 (80750992)
松田 和樹 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (10906861)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 新領域法学 / 法とジェンダー/セクシュアリティ / 基礎法学 / 法哲学 / 公法学 / 憲法学 / 民事法学 / 家族法学 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、既存のジェンダー論を批判するかたちで提出されてきた差異感応的なジェンダー/セクシュアリティ論の問題提起を、法学的に理解可能なものとして再記述し批判的に検討することで、「法」がいかにジェンダー/セクシュアリティを意味づけているかを明らかにし、これによって「ポスト・ジェンダー法学」を構築することである。 初年度となる本年度は、とくに現代日本の婚姻・養育・ケア・セックス・生殖・戸籍・氏名の制度に焦点を当てて、差異感応的なジェンダー/セクシュアリティ論と法哲学、そして実定法学の議論を取り上げて検討した。 第1回会合(4月開催)では、研究課題の採択を受けて、研究課題の内容と研究代表者、分担者、協力者・吉良貴之氏の役割分担を再確認し、研究期間全体のスケジュールをブラッシュアップした。第2回会合(5月)は、若手法哲学研究会と合同で公開研究会を開催し、トランスジェンダー理論の専門家・山田秀頌氏と葛原千景氏をお招きし、ご講演いただいた。第3回会合(6月)では、コロナ禍を受け、研究スケジュールや研究費の分配について再度検討した。第4回会合(8月)では生命・生殖倫理と家族、日本国憲法と家族について検討するとともに、性暴力と「法と感情」の問題を検討した。第5回会合(9月)では、婚姻制度廃止後の成人同士の共同生活や養育の法制度の規範的指針について検討した。第6回会合(10月)では「法と感情」について再度検討した。第7回会合(1月)では家族法と愛について検討した。第8回会合(3月)では、政治哲学者エリザベス・ブレイクの議論や氏・戸籍について検討するとともに、研究代表者・分担者全員が関わる共著の内容を検討した。 以上の研究会での検討事項の一部は、学会・研究会発表や論文・書籍刊行などの研究成果として実を結んだ。とくに研究分担者・池田弘乃が単行書『ケアへの法哲学』を公刊した点は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で説明したように、初年度はコロナ禍の最中であったにもかかわらず、何度も研究会合を重ね、研究を進めることができた。また、書籍や論文、学会発表などのかたちで研究成果を残すことができた。 研究分担者による調査研究の一部が、コロナ禍の影響で若干遅れているが、この遅れは来年度の早期に解決することができるものと考えている。 以上から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(2年目)も引き続き、現代日本の婚姻・養育・ケア・セックス・生殖・戸籍・氏名の制度に焦点を当てて、差異感応的なジェンダー/セクシュアリティ論と法哲学、そして実定法学の議論を取り上げて検討する。このために、複数回の研究会合を開催する。第1回会合(4月)ではケア・ワーカーの国際的移動に関する問題や、共同生活契約と弱者保護の問題について検討し、第2回会合(5月)では昨年度の成果の振り返りや今後の研究計画について検討した。第3回会合(7月開催予定)では本科研メンバーらによる2023年度実施の学会発表の内容について検討することが予定されている。 また、研究成果を論文・書籍などのかたちで発表することを目指す。現在、研究代表者、分担者、協力者が関わる、分析フェミニズム哲学についての翻訳書の共訳・刊行作業をおこなっている。さらに研究代表者、分担者による共著書の執筆もおこなっており、本研究課題の助成期間終了までの公刊を果たす。 以上に加えて、コロナ禍の状況を見つつ、研究分担者をリーダーとする調査研究を可能な限り進める。また、本科研メンバーによる国際学会での研究発表も検討しているが、コロナ禍の影響で国際学会の開催状況が予測しづらいという事態が発生しており、また外国への渡航が困難な状況が今後も続くようであるなら、場合によっては国内の研究会・学会での報告に切り替えることも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通りの執行に努めたが、新型コロナウイルス感染拡大を原因としていくつかの出張を取り止めたことや、調査研究関連で若干の遅れが生じたことにより、次年度使用額が生じた。 残額はさしあたり物品の購入費用にあてることにするが、コロナ禍による状況が改善されるようであれば、出張費用や調査研究関連費用として支出することも検討する。
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