研究課題/領域番号 |
21K01299
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宇野 二朗 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (90438341)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地方公営企業 / 地方交付税 / 附帯事業 / 脱炭素化 |
研究実績の概要 |
この研究では、上下水道などの生活インフラの持続可能性を高める制度的条件として、地方公営企業制度のあり方を、個別事業体レベルと全国レベルの双方について、主に日独を研究対象として調査検討する。 本年度は、個別事業体の経営に関する研究については、横浜市、札幌市、京都市、仙台市の個別の水道事業の経営史を明らかにするための準備作業を行った。それぞれの事業年報等の資料・文献の所蔵状況を確認し、収集計画を立てた。また、各団体の若手・中堅職員を集めた研究会の実施を企画し、その実現に向けた準備を行った。その際、各政令指定都市の水道事業の特性を比較することが可能となるように、各都市が公表している業績指標を収集し、整理した。 一方、全国的な視座からは、地方公営企業制度に関する二つの論点につき、制度変化を調査し、まとめた。一つは、附帯事業である。地方公営企業は独立採算制度をとることもあり、本業以外の事業への多角化が制限されているが、1980年代末から90年代にはその規制緩和が行われていた。一方で、2000年代に入るとNPM的な構造改革が進む中では、公的機関による保養所等の公益施設の新設を制限する閣議決定が行われたこともあり、また、市場環境が厳しかったこともあり、各自治体は、附帯事業の実施に消極的になっていった。そうした経緯を明らかにした上で、地方公営企業制度にとっての附帯事業の位置づけについて検討した。もう一つは、水道事業における脱炭素化の傾向である。脱炭素化は全国的な政策課題となり、地方公営企業に対する期待も大きいのだが、地方公営企業では独立採算制が採用されていることもあり、脱炭素化事業のための財源の考え方を整理した。 また、地方交付税制度の運用の流れに合わせてその都度関係者に対する聴き取り調査を行い、理解を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各都市の資料の所在の調査と、各都市の担当者との連絡調整に時間を要したが、日本の事例について、東京都と大阪市の事例に加えて、その他の大都市4都市について研究の準備にとりかかることができた。また、昨年度に続き、地方交付税制度についても1年間を通じて制度運用を観察できた。
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今後の研究の推進方策 |
日本の大都市水道事業に関する調査を進める。その際、人口減少が進む中で脱炭素化を進めなければならないという矛盾に対して、各都市でどのような将来像が描かれるのか、各都市の職員と意見交換をしながら研究を進める。地方交付税制度についての観察を続けるとともに、それがどのように地方公営企業制度(特に中小規模)へと作用しているのか検討を進める。また、ドイツのシュタットベルケに関する文献調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
私的事情から数日間の出張に出ることが難しく、資料収集や意見交換のための研究出張が予定通りできなかった。本研究の当初に新型コロナウイルス感染症流行の影響から研究出張が難しかったことも影響している。次年度にも長い出張に出ることが難しいことが想定されるが、できる限り研究出張し、各都市担当者との意見交換や資料収集を進める一方で、資料整理や検討を先行させるようにする。
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