研究課題/領域番号 |
21K01301
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
遠藤 十亜希 城西国際大学, 国際アドミニストレーション研究科, 教授 (30813951)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | deportation / Japan / UK / path dependence / institutions |
研究実績の概要 |
日本の出入国在留管理制度(特に退去強制手続き)を英国のケースと比較分析する本研究の第一段階として、2021年度は、日本の入管(退去強制)制度の歴史的発展と制度的欠陥の構造、そして、制度の変化における政治的要因を明らかにすることに焦点を絞った。 ①【入管(退去強制)制度の歴史的発展の分析】過去30年間の日本の入管制度の変遷の経路がある特定のパターンをなしていることが、定性分析で証明された。また、このパターンは、日本政府の外国人受け入れ政策の本義を下支えしているとの仮説を導き出した。研究結果は、論文発表(英文)の形で報告した(遠藤 2021年)。②【入管制度的欠陥の構造の解析】上記(①)の研究結果を基に、現在の入管制度が構造的・行政的欠陥を持つか、また、陳腐化した入管制度の抜本的改革が達成できない政治要因を体系的・理論的に解析した。研究結果は、2本の論文(英文)取りまとめた(2022年5月および6月発表予定)。③【入管制度制度の変化における政治的要因の分析】上記(①および②)の研究結果を基に、過去、いくつかの歴史的節目(critical junctures)において抜本的改革が行われなかった原因を体系的・理論的に探求した。理論的には、新制度論の「経路依存(path dependence)」理論を用い、戦後の「節目」を見つけ、制度改革にどのような政治的要因が作用し、改革のアクターがどのような意図・利益で影響を及ぼしたかを解析した。「日本の入管は過去の歴史に引きづられて(すなわち経路依存)改善できない」という曖昧な通説に、具体的かつエビデンス・ベースで政治ダイナミクスの作用を実証することで、理論的貢献を果たした。研究結果は論文(英文)取りまとめた(未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の事例の研究は、過去の研究蓄積に新たなデータや解釈を加え、また、コロナ禍下での社会活動の諸制約にもかかわらず、オンラインを駆使したデータ収集やヒアリングが行えたため、当初の達成目標に到達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研究の第2段階として、比較事例としての英国における入管制度改革の促進・阻害要因と作用を明らかにする。その歴史的変遷と制度改革の過程を日本と比較した定性分析を行う。先行研究の網羅は2021年度から開始しており、今後も継続する。 現地調査として、英国の研究機関(COMPAS-University of Oxford等)や政府機関、収容施設、民間の移民支援団体を視察して文献調査とヒヤリングを行う計画であるが、コロナ感染症の拡大や、ロシアのウクライナ侵攻による欧州地域の政治情勢を見極めながら、研究活動を計画・実行していきたい。 現地視察やオンラインで得られた情報と知見をもとに、制度改革における政治的要因を抽出する。また、本研究の比較分析の精度を高めるため、英国を含め欧州の移民政策に精通する研究者から助言を受ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症パンデミックによる日本国内外の諸規制が敷かれる中、当初計画していたフィールドスタディ目的の出張が一切行えなかったため、また、当初予定されていたドイツでの国際会議が2022年6月に延期されたため、出張経費が発生しなかった。
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