研究課題/領域番号 |
21K01304
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
小野 一 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (80306894)
|
研究分担者 |
岡村 りら 獨協大学, 外国語学部, 非常勤講師 (40614954)
松尾 隆佑 宮崎大学, キャリアマネジメント推進機構, 講師 (20873326)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 放射性廃棄物 / 最終処分場 / 熟議民主主義 / ステークホルダー / 比較政策分析 |
研究実績の概要 |
2021年度には5回の研究会(オンライン開催)を行い、本科研メンバー以外の参加者も含め議論した。開催日は、6月12日、7月24日、10月30日、12月18日、および2022年2月19日である。Brunnengraeber, et al., 2015, Nuclear Waste Governance: An International Comparison. Wiesbaden: Springer VS.(現在までのところ最も網羅的な放射性廃棄物管理政策の比較研究と思われるベルリン自由大学環境政策研究所の3巻本シリーズの第1巻)に掲載された論文をメインテキストに、日本、ドイツ、イギリス、フランスの放射性廃棄物問題について検討するとともに、日本における新展開(寿都町の文献調査応募なども含む)にも注意を払うようにした。理論問題に特化した討論を行ったこともある。コメンテーターには外部からの専門家が招かれることもあり、当該問題に関心を持つ者のネットワーク作りにも寄与した。 欧米の事例研究とともに日本の状況も、本研究会の重大な関心事である。オンラインではあるが、北海道寿都町長や、青森県下北半島や北海道幌延町などで活動する市民活動家やルポライターにインタビューを行うなどした。オンラインによる国内研究会や取材活動が中心になったのは、コロナウィルス蔓延により活動が制約されたことの結果でもある。実地の調査では、11月23日に長崎県対馬市で開催された原子力発電環境整備機構(NUMO)の対話型全国説明会に小野が参加し、岡村は2022年3月に幌延深地層研究センター(および幌延町役場)を訪問した。海外調査は、本年度は実施を見合わせた。 研究成果を学術論文等のかたちで発信する活動も、各メンバーにおいて行われた。松尾隆佑著『3・11の政治理論/原発避難者支援と汚染廃棄物処理をめぐって』は2022年3月31日に刊行された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス蔓延により出張を伴う調査研究活動や対面での研究会活動が制限される中で、オンラインミーティング等のツールを活用することにより、活発な研究活動や情報交換を行った。とりわけ、オンラインミーティングの場が、本科研メンバー以外の研究者や各界で活動する人々とのネットワークの場として機能したことの意味は大きい。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度に成果を上げたオンライン方式の研究会(時宜をみて対面での開催も視野に入れる)は、今後とも継続する。ただしその内容については、新しい機軸を盛り込んでよりいっそうの充実を図る。2021年度の研究会では、日英独仏の事例研究により、主要国の放射性廃棄物管理政策の問題状況をひととおり把握することができた。今後は、北欧諸国、東欧諸国などに視野を拡張するとともに、欧州にとらわれない事例研究が求められる。とりわけ、最近のウクライナ情勢の変動とも関連し、ロシアおよび旧ソ連邦諸国(バルト3国、ウクライナ等)への関心が高まる。EU圏とロシア圏の狭間にあるこれらの国々は、エネルギー供給や原発のバックエンド政策との関連でも重要な意味を持つ。 ドイツではゴアレーベンが最終処分場候補地から外れたことが象徴的だが、候補地選定をめぐる政策は新たな段階に入っている。地元と協議しつつ社会的合意形成を図っていくという戦略では、結局は候補地を見つけられないという経験(イギリス等)から、強権的手法が再び強まることも排除されない。コロナが一段落して活動条件がよくなると見込まれることから、海外調査も含めた研究活動を充実させる。 放射性廃棄物管理政策を読み解くための理論的研鑽も、よりいっそうの充実を図る。これまでのところで、熟議民主主義、ステークホルダー、NIMBY等の重要な論点が提出されたが、それらの放射性廃棄物問題への実装が期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(繰越金)が生じた最大の理由は、コロナウィルス蔓延により当初予定していた海外出張・調査が延期となったためである。また、同様の理由から国内における研究会活動もオンラインでの開催が中心になった。本研究プロジェクトを遂行するには、国内外の出張調査は不可欠であるため、コロナウィルス蔓延の収束が予想される翌年度の予算に組み入れて調査活動を遂行する。
|